馬鹿も知らないのか
ザーーーーッ
その瞬間、激しい豪雨に襲われた。
『うわっ…!』
漫画では雨が降るとわかっていながらも、生の乱馬と九能帯刀の戦いに見入ってしまっていたあたしも雨に降られ、段々と男へと変身していく。(み、皆に見られてしまう…!)
ドドドドドドド!!
その時、校門から猛ダッシュでやってきたパンダ(玄馬さん)があたしを抱え、戦っていた乱馬もひっ掴み、側にいた九能帯刀を払いのけ急いで体育館倉庫へと向かっていった。
「九能がパンダにやられた!」
「あのパンダ強えっ!!」
「はあはあ…あーちくしょ。雨さえ降らなきゃあんな野郎一発で…」
カララ…
「さー、それはどうかしらね」
「…なんだよ、あかね」
体育館倉庫へと入るとあたし達はふう、と息をついた。乱馬は九能帯刀との決着をつけれず不服そうであったが、窓から入ってきたあかねの言葉に眉を潜めた。
『乱馬、喉』
「ん?…アザ?」
間を割るようにあたしが言うと、乱馬は自分の喉へと視線を落とした。そこには、木刀でつかれたアザが残っていた。乱馬が技を繰り出したと同時に九能帯刀も乱馬へと攻撃していたのだ。乱馬はそのアザを見て感心を漏らした。
「ほー、触れてもいないのに大したもんだ」
「触れてたら風穴が開いてたわよ」
『そうなってたら乱馬死んじゃってたね』
「ばーか、触れさせる訳ねーだろ」
会話をする中、あたしと乱馬は玄馬さんにお湯をかけてもらい本来の性へと戻る。
「よくて相打ちってとこじゃない?」
『そう?あたしは乱馬の方が上手だと思ったけど』
「え?」
あかねの言葉に返答したあたしは持っていた鞄から真っ白なノートを取り出すとサラサラと文字を書き出し、乱馬へと見せつけた。
『でも乱馬、"馬鹿"とはこう書くの』
「…おめー見えたのか?」
そんなあたしに乱馬は驚き、あかねと玄馬さんは状況が読めずきょとんとしていた。
正直、漫画での乱馬と九能帯刀の戦いの行方は覚えていなかったが雨が降りだす瞬間、乱馬が繰り出した技を空手で得た動体視力であたしはしっかりと見ていた。物凄い速さで九能帯刀の額に"馬鹿"と書いていたところを。その事を思い出しながらあたしはニッと笑った。
『伊達に中国まで修行しに行ってないよ(車に轢かれていつの間にか居ただけだけど)』