じゃじゃ馬にさせないで! | ナノ


聞き捨てならない言葉





「それ、あかね!なまえくん!君達も乱馬くんの勇気ある行動に感動しなさい」

あたしはあかねと天道道場で手合わせをした後、部屋へと戻り一休みしていると、何やら道場から騒がしい声が聞こえてきた。何だ何だと道場へと向かおうと部屋から出れば、あかねも気になったのか廊下で鉢合わせ、道場まで一緒に向かった。

道場へと辿り着けば、どうやら玄馬さんと早雲さんが誰かと騒いでいたようで、どうやら玄馬さんと早雲さんが2人して何かに立ち向かっているようだった。そんな光景に急いで駆け寄れば、あたし達に気付いた早雲さんは、突然訳の分からない事を述べると、乱馬と呼ばれた物体をずい、とあたし達の目の前に差し出した。

「ひいっ」
『バ、バケモノ…!』

恐らく人であるのだろうが、玄馬さんと早雲さんにボコボコにされたのか、その人はとても見るも無惨な顔になっていた事に、思わずあたしとあかねは悲鳴をあげた。

「っ誰がバケモンだ」
『ていうか、あなた誰!』
「(なまえ…)何、一体どうしたのよ」
「…う〜〜〜ん」
【まだ足りんようですな】

それから差し出された知らない男の子(何か見た事あるような…?)とあたし達の様子を見ていた玄馬さんと早雲さんが互いに目配せすると、ふいに男の子の首根っこをがっしりと掴んだ。

「へ?」

「ていっ!!」

バァン!!


『!』
「お、おとうさん!?」

そして徐に男の子を地面へと投げ付けた早雲さんに思わず開いた口が塞がらない。(この人、一体何したの…?)だが、呆けている場合ではない、とすぐさま我に返るとあたしは急いで倒れ込んだ男の子の前へと立ちはだかった。

『り、理由は分かりませんが、弱い者いじめはやめましょ!』

もしかしたら天道家に入り込んだ不審者なのかも知れない(多分見た事ある人だと思うしそうじゃないとは思う)が、こうもボコボコにやられているのを目撃してしまっては、思わず心が痛んでしまいあたしは止めに入った。

「っ引っ込んでろ、バカ!」
『バっ…!?何よ、あなた弱い癖に!』

すると、倒れ込んでいた男の子はよろめきながら立ち上がると、何故かあたしを見て喧嘩腰に言葉を掛けてきた。そんな男の子に思わずムッとして言い返してしまう。(せっかく人が助けてあげようとしてるのに!)

「あのなっ誰のために黙ってやられてると…!」
『やられてる?あなたが元々弱いだけじゃないの?』

売り言葉に買い言葉の様な言い返しを繰り広げれば、男の子もヒートアップしたのか、ムッと眉間に皺を寄せて再び口を開いた。


「っおめーもかわいくねー奴だな!!」


『!かわいく、ねー……?』

その時、何かが脳裏を走った気がした。そして、明らかな罵倒であるのにも関わらず、むかついたというよりも、どこか聞きなれた様な、懐かしい台詞のように思えて心が弾んだ気がした。

「こ、これは…!」

その時、何かに気付いた様に早雲さんがか声を漏らした。

「もしかしたら、日頃あかねと乱馬くんの言い合いの聞き慣れたフレーズに反応しているんじゃないか…!?」
「!そうよ、きっとそれだわ!」
「そうか、それならっ…!(すぅっ)色気がねえっ!!凶暴!不器用!寸胴!まぬけっ!!」

勢いよく繰り出される罵倒の言葉に、あたしは思わず頭を抱え込む。早雲の言う通り、つい最近までよく聞いていた様なフレーズに、あたしの中の何かが込み上がってくる様な感覚。(あと少し…あと少しで何か、)


ボカッ!

「っ何すんだあかね!!」
「調子にのらないでよ!」

その時、後ろで黙って聞いていたあかねはどうやら耐えきれなくなったのか、思わず乱馬を勢い殴った。

「しょーがねーだろっなまえの記憶を戻すにはこれが効果ありそうなんだからよ!」
【いや、待て!】
「え?」
「ふむ、どうやらあかねと乱馬くんの言い合いだけでは完全には思い出せん様だな」
「それじゃ、どうすれば…」
「あかねみたいに、なまえくんに直接言っていた言葉はないのかね」
「なまえに?えっと…こいつには特に言った覚えが…」
「!乱馬!あれならもしかして…!(ひそひそ)」
「え?…!そうか、それか!」

早雲さんの言葉に乱馬が必死に考えていると、ふいにあかねが乱馬へと耳打ちをした。そしてあかねから何かを聞いた乱馬はハッと顔を上げると、再びあたしを見遣り、再び口を開いた。




「っヘンタイ女!!」


ピシッ




その時、あたしの中で聞き捨てならない言葉が深く何度も木霊した感覚に襲われた。





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