じゃじゃ馬にさせないで! | ナノ


洗髪香膏指圧拳





「うーん、外傷は全くないね…」

あれから、良牙くんを連れて行ったものの何の収穫も獲れずに戻ってきたさっきから馴れ馴れしい乱馬という男の子とあかねに、あたしはどこも悪くないというのに、無理矢理連れられほねつぎへとやってきた。そして事の経緯をあかねが東風先生へと説明し終えると、先生はふむふむとあたしの頭を触診してそう告げた。

『ほら、どこも悪くないでしょ?』
「外傷はないけど乱馬の事忘れてるじゃないっ」
「目が覚めた時はどんな感じだった?」
『なんかこう…頭がすっきりしてて…』
「…う〜〜〜ん、これは…もしや…」
「!なんかわかったのか?東風先生」

先生の問いかけに素直に答えれば、その答えに東風先生は何かわかったのか小さく言葉を漏らした。(え、まじであたしどっか悪いの?)


「恐らく…伝説の魔拳、『洗髪香膏(サイファツヘンゴウ)指圧拳』にまちがいない!」
「なっ…なんだよそれは!!」


『さ、さいふぁつ…?(何言ってんだ???)』

すっかり意味不明な言葉に首を傾げていれば、突如部屋の外からドカドカと重圧音の様な音が響きこちらへと向かってくるのに気付いた。

バン!

【やはりそうであったか!】

かと思えば、勢いよく扉が開かれ、何故かパンダの姿をした玄馬さん(あ、ここでバイトしてるんだった)(…あれ?玄馬さんて、何で知り合ったんだっけ…?知り合った時、誰か一緒にいたような…?)が気迫迫った表情で現れた。

「早乙女のおじさま…」
「おやじ」
『えっ?おやじ?(この人の…お父さん?…て事は、もしかして玄馬さんと、一緒に知り合ったのって…)』
「っもしかして、おやじ決闘見てたのか!?」
【この目でしかと】

あたしの言葉に乱馬は触れる事なく、玄馬さんにそう尋ねれば、玄馬さんはドヤ顔で頷いた。

【あれは、まったく今、思い出し…】

かきかきっ。

「人間に戻れ!人間に!」

そして玄馬さんが一生懸命話をしようと手に持った板に文字を書き連ねるも、時間がかかり過ぎる事に男の子は急いでやかんを持ってきて玄馬さんへと手渡した。



「――あれは、まったく今思い出しても神技…というほかはない!」

玄馬さんがお湯を被り元の姿へと戻ると、改めて事の経緯を話し始めた。一体、あたしの身に何が起きたのか。

「…背後をとってからの手の動きは、もはや常人のものではなかった!」
「「「『…!』」」」

玄馬さんの回想で話される言葉を、あたし達は脳内で再生し始める。

シャンプーがあたしの背後へと回り込んだ瞬間、突如取り出された液体の入ったボトルと櫛、そして瞬時にクロスを被せられ始まったシャンプーのシャンプー。(いやダジャレじゃなくてね)

「その間なんと、っわずか56秒!!」
「はやい…!」
「ううっ…すごいですね!」
『それで頭がすっきりしていたのね!!』
「結局それがなんなんだ」

興奮するあたし達を他所に冷静に乱馬が突っ込む。だがそんな乱馬にお構いなく今度は東風先生が言葉を続けた。

「洗髪香膏指圧拳とは、すなわち…特別に調合した漢方液(シャンプー)を用い、頭のツボを押す事により記憶操作を行う、恐るべき拳なのだよ」

「それでお前…俺のことを忘れて…!」
『ちょっと、馴れ馴れしく前に立たないでよ。そもそもあなた誰なの』


「っ治す方法はあんのか!?」


乱馬は勢いよく東風先生へと振り返ると、東風先生は節目がちに口を開いた。

「とにかくその漢方液を手に入れん事には…」
「っよし!来いっなまえ!」
『え!?ちょっと!?』
「あっ乱馬っ!」

勢いだった乱馬は東風先生の言葉も終わらぬうちにあたしの腕を掴み取ると、ほねつぎから飛び出すと、あたしを脇に抱えて勢いよく地面を蹴り屋根の上を乱暴に伝い飛び出した。

『ちょっちょっと!?何なのよあんたーっ!?』
「シャンプー!どこにいる!?漢方液よこせっ!!」
『いいから下ろしなさいっ!!(本当に何なんだこの乱暴者は!!)』





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