じゃじゃ馬にさせないで! | ナノ


あかねの許嫁!?





(確か、シャンプーと対決して…良い感じに戦ってたところまでは覚えてるんだけど……)

それからどうしたんだろう。
何も覚えていない。

『でも何か、妙に頭が…すっきりしてる』

そう、物理的に。

「おいっなまえ!」


意識がはっきりしてから、あかねに手を借り立ち上がると、気を失う前の記憶をぼうっと思い出しながら歩き始めた。すると、後ろから黒髪の三つ編みを結ったチャイナ服の男の子に再び声をかけられてふいと振り返る。

『ねえあかね、さっきからこの人、誰なの?』
「なまえ…」
「お前なあっ」
『え、何?どっかで会った事あるとか?』

あかねの戸惑う姿と、呆れるように漏らされる三つ編みの男の子の声に初めましてじゃないのか?と再びじっと見つめてみるが、やはり記憶にはない。

「っつーか、何であかねだけわかって…」
「あ、いたいた。あかね!なまえ!」
『あ、みんな』

男の子が何かを言いかけた時、ふいに後ろからクラスメイトの声が聞こえてくると、あたしは男の子そっちのけに体を向けて笑みを浮かべた。

「ちょっともう、心配したのよ」
「2人とも大丈夫?」
「あたしは平気、でもなまえが…」
『やだな、あたしも平気だよ』
「……おいこらっ」
『ちょっともう、さっきからこの人何なの?』
「…何なのって、」

折角人が楽しくお喋りしていると言うのに、またもや横から割り込んできた男の子に怪訝そうな顔であしらえば、クラスメイトまでも戸惑うような表情を浮かべた。(…あ!もしかして)

『転校生?』
「まあそうっちゃそうなんだけど」
「ていうか、みょうじと一緒に転校してきたじゃねーか」
『え?そうなの?』
「それに、あかねの許嫁じゃない」
「!それはとっくに解消して…!」


『…許嫁?…え!?あかねの許嫁!?っちょっとあかね!何でそんな大事な事黙ってたの!?』


「〜〜〜っ」

聞き捨てならない言葉に思わずあかねに視線をやれば、あかねはどうすればいいのやら、と頭を抱えた様に俯いてしまう。(ひどい!仲良しだと思っていたのに内緒にされてたなんて…!)悲しいと言わんばかりのあたしの心情を他所に、クラスメイトは話を続ける。

「もーずっと前からあかねの家でみんな一緒に暮らしてんじゃない」
「ほら、乱馬くんよ」
『乱…馬…?』
「そうよなまえ!乱馬よ乱馬!(あんたの好きな乱馬なのよ!)」

追い討ちをかけるような情報量にあたしの脳内はグルグルと思考を張り巡らしていく。


(乱馬…らん、ま…?あれ…そう言えば、どこかで聞いた事あるような…。あれは、あたしが中学生の頃……いや待って。らんま…?あれ、もしかしてつい最近聞いた言葉じゃ…?)

『……』
「!なまえ!?」
「ちょっと!どうしたのよ!」

思考を巡らせていれば、思わず頭を抱えてしゃがみ込んでしまったあたしに、あかねやクラスメイトが心配そうに声をかける。

『!(はっ)』

その時、ふいに頭に何かが過った。

『あれだ!天井と鴨居の間に通風、採光のため格子や透彫を取り付けてあるところ!!この前早雲さんが教えてくれたの!!』
「それは欄間だろ!もはや人じゃねーだろ!」
『っ…キューバ起源のラテン音楽!四分の二拍子で力動感があるあれだ!』
「ルンバだろそれはっ!」
『くっ…えっと、じゃあ…!』

「(こっこいつ…俺のことだけきっちり忘れてる…!)」

最早クイズに答えるノリで「らんま」に対する物を考えていると、乱馬と呼ばれた男の子はあかねの抱えていた良牙くんをひょいと奪い取った。

「良牙、ちょっとツラ貸せ」
「あっ!ちょっと、Pちゃんどうするつもり!?」
「話聞くだけだよ」
「Pちゃんが話せる訳ないでしょ!」
『(…今、Pちゃんの事良牙って言った…?この人、正体知ってるの…?)』

「返して!」

ビュッ!

「落ち着けって!話が済んだらちゃんと返すから…よっと!」

フワッ…



『!(あの軽い身のこなし…!)』

あかねの凄まじい蹴り捌きをいとも簡単に避けると、男の子は良牙くんを掴んだまま、どこかへと飛び去っていった。(今の、あかねの蹴りを避けた動きと、飛び去る軽い身のこなしは…ただ者じゃない!)

『っあれは一体誰なの!?』
「だから」
「乱馬くんだってば」
「もう!折角Pちゃん取り戻したばっかりなのに!乱馬のばか!」





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