どちら様ですか?
「なまえ!!!」
「ぶいいーっ!!!(なまえさん!!!)」
あかねと良牙くんの声が響き渡る。
その声を最後に、あたしの視界は真っ暗になった。
その頃。
「あかね!なまえ!!」
あかねに殴り飛ばされ教室から飛び出てしまったが、急いで壁をよじ登り、再び教室へと戻るが、そこにあかねとなまえ、シャンプーの姿は見えない。
「っおい!あかねとなまえは!」
「乱馬くん。あの3人なら出てっちゃったわよ」
「なんだとっ!?」
遅かったか。
「っくそ!」
クラスメイトの言葉に俺は再び教室の外へと踵を返すと窓から校庭へと飛び降りた。
なまえはあかねと違って、挑発に乗りやすい訳ではないし、まだ冷静に物事を考えれる方だ。だが、今までの傾向を見れば、頼られると首を横に振れない気質で、何だかんだ勝負事を好み、結局は面倒ごとに巻き込まれてしまうのがオチだ。(シャンプーの一件に関しては俺のせいなんだけども……ってあれ?もしかして今までのも全部俺絡んでる?)
兎にも角にも、シャンプーは女傑族である。
そして、(女でだったけど)俺が一度戦って強さも知っているのだ。(なまえももしかしたら勝てるかも知れないが…)シャンプーの強さは少し厄介だ。(…やられてなきゃいいけど)少し不安を抱えて俺は3人の姿を探すべく、くまなく校庭を走った。
「ぶいいーっ!!!」
「!良牙の声…!」
すると、突然響き渡った良牙の声に、ふっと顔を上げた。(あっちか!)俺は良牙の声がした方向へと急いで向かった。
「!あかね!!!」
声のした方向に立ちはだかるフェンスに軽々と飛び乗れば、そのすぐ先には小さくしゃがみ込むあかねの背が見え、思わず叫んだ。
「!らんまぁっ…!」
「おいっ、なまえはどうし…!!」
俺の声に勢いよく振り向いたあかねは泣いており、驚いた俺は急いでフェンスから降りてあかねの側へと駆け寄った。
すると、そこには地面に横たわるなまえがいた。
「!?なまえ!?っ一体何があったんだ!?」
「わからないの!シャンプーとの戦いで、突然強い風が吹いて目を閉じた一瞬の隙に何故か意識を失っちゃって…!!」
「っくそ…!おい!なまえ!こらっ!!」
「なまえ!お願い起きて!!」
「ぶいいっ…!(なまえさん…!)」
ぴくりとも動かないなまえに胸騒ぎを覚える。そんな不安を掻き消すように、俺はもう一度なまえの体を揺すった。
「っおい!起きろ!なまえ!!」
『……ん、』
「「「!!」」」
その時、小さくなまえの息が漏れた。それに気づいた俺とあかねと良牙はぴたりと動きを止めた。
『…あれ、』
それからなまえはゆっくりと目を開けて、ゆっくりと体を起こす。
「なまえ…!!よかったぁ…!」
「ぶいいっ!ぶきー!(なまえさんっ!良かった…!)」
そんななまえにあかねと良牙が涙ながらに安堵の声を漏らす。二人に続き、俺もホッと胸を撫で下ろすや否や込み上げる怒りにわっと口を開いた。
「ばっ、ばかやろう!!心配させやがって!!」
『……』
「な、なんだよ…!」
そんな俺に、なまえはじっと見つめて、暫し動かない。そんなもどかしさに口を開ければ、なまえもゆっくりと口を開いた。
『…えっと、どちら様ですか?』
「へ?」