死の接吻、再び
「Pちゃんっ…!」
愛妻弁当に入れられたPちゃんを見るや否や、血の気を引かせたあかねは絶句しその場から動けずにいた。恐らく気絶はしてるが微かに体が動いたのを確認出来たあたしは、急いで愛妻弁当の中に無造作に手を突っ込み良牙くんを救い出した。
『あ、あかねっ!大丈夫だよ息してる!!ほらっ…』
「っ何するか!…はい、乱馬。あーん」
そう言ってあかねに手渡そうとすると、愛妻弁当を台無しにされたシャンプーは勢いよく良牙くんを奪い取った。そして気を取り直し、後ろへ振り返り乱馬へと向き合うと、良牙くんを箸で掴み取り乱馬の口元へと近づけた。(例えそれが本物のブタだったとしても、あーん、はちょっと…)案の定、引き気味だった乱馬は良牙くんを近づけられ、更に顔を引き攣らせるとシャンプーの持つ箸からそっと良牙くんを手に取ると、目を覚まさせようとピタピタ、と良牙くんの頬を叩いた。
「……(ハッ)!!ぷぎっ!!」
がぶっ!
「痛えーっ!!」
すると、良牙くんが目を覚ましたかと思えば、気絶前に感じた危機感からだろうか、すぐさま乱馬の腕に齧り付いた。(これは流石に乱馬が気の毒だ)
「Pちゃん!」
「!ぷいっ!(あかねさん、なまえさん…!)」
「っよかった〜!Pちゃん〜!」
そんな二人にあかねが声を掛ければ、良牙くんがあかねの声に気付き、勢いよく胸の中へと飛び込んだ。(一応助けた?のはあたしなんだけど、まー良牙くんもあかねが好きなんだし、しょーがないか)あたしはそんな事を考えながらも、あかねが泣いて喜ぶ姿を見ると、ホッと胸を撫で下ろした。
スッ…
すると、不意に横から白く細い手が伸びてきた。かと思えば頬を掴まれ、ぐい、と横に引っ張られた。(え、一体何…)
ちゅ。
「!(死の接吻…!)」
『(あ、そう言えば)』
その時、あたしはふと思い出した。
あかねも、シャンプーから死の接吻を受けていた事を。確か乱馬が愛の接吻を受けてその後くらいだったかな、と微かに覚えていたのだが、それがまさか今だったとは。
側から見れば、女同士で接吻なんて、教室内も一気にどよめいてしまうのも無理は無い。ざわざわと皆がそれぞれに驚きを隠せず、耳打ちなどをしながらあたしを見ている。(……ん?…あれ?)なんて呑気な事を考えていたのだが、その時ふと違和感を覚えた。
『…えっと、』
そして、同様にあたしを見て驚くあかねと乱馬を見遣ると、ゆっくりと口を開いた。
『…え、今、接吻されたのって、…あたし?』