よくよく考えてみれば
翌日。
「おはよー」
『おはようございまーす』
「あら、あかね、なまえちゃん。おはよう」
いつもの様に起床して学校へ行く支度を終えると居間へと向かった。丁度あかねもやって来たところで一緒に部屋へと入れば、そこには既に早雲さんとかすみさんとなびきさんが朝食を食べていた。
「乱馬と玄馬さんは?」
「まだなのよ。あかね、起こしてきてちょうだい」
「なんであたしが?」
「なんでって…」
「ふーん、根に持ってるんだ。乱馬くんとシャンプーの事」
「別に。どっちかって言うとあたしよりなまえの方が…」
『!?あ、あかねっ』
あかねが部屋を見渡し、乱馬と玄馬さんがいない事を何気なく口にすれば、かすみさんに起こしてきてほしいと促され、昨日の一件からあからさまに嫌な表情を浮かべた。そんなあかねになびきさんが揶揄う様に言うとあかねはちら、とあたしを見て先の言葉を言いかけた。そんなあかねに慌ててわーわーっと身振り手振りで遮ると『い、一緒に起こしに行こ!』と半ば強引に背中を押して居間を出た。(あかねってば、仮にも許嫁なんだから(本人は解消したつもりだけど)早雲さんの前で変な事言うとややこしくなっちゃう…!)
「もー、何であたし達が起こしに行かなきゃならないの」
『まあまあ落ち着いて』
この様子だと昨日からあかねの怒りは収まっていない様で、何故か好きだと自覚したあたしはすっかり怒りも収まりあかねを宥める状態となっていた。
あれから昨日、寝る前によくよく考えてみれば、この世界の人間じゃないあたしが乱馬を好きだと自覚したところで、いつ元の世界に戻るのか分からない訳で、そんなあたしが乱馬にアプローチするなんて事考えられないし、結局最終的にはあかねとくっつくんでは?なんて冷静になったのだ。(そりゃ好きだとわかった今、あかねとくっつく事にショックは隠せないけど、予め分かっている事なんだし受け入れれそうな気がするんだよね。いやそもそもそうなるまでにあたしはこの世界にいるんだろうか?…あ、だめだ。珍しく真剣な事考えたら頭が痛くなってきた…寝よ)という感じで、まあ今まで通り成るようになるか、という気持ちであっけらかんなのである。(あたし、自分のこういうとこ好きだわ)
ぐわらっ
「乱馬!いつまで寝てんのよ!」
『玄馬さんも、もー朝です、よ…』
「……」
そんなこんなで乱馬と玄馬さんの使う部屋の前まで辿り着くと、あかねが乱暴に引き戸を開け言葉を発した。それに続いてあたしもひょっこりと顔を覗かせ声を掛けるや否や、あたし達は目の前に広がる光景に暫し黙り込んでしまった。
「スー、スー」
「愛人…」
何とそこには、いつの間に潜り込んでいたのか、シャンプーが乱馬の布団に入り込み、仲良く眠っているではないか。
「……」
『!あ、あかね…?』
するとあかねは突然、くるりと部屋を出て行ったかと思えば、すぐに戻ってきた。…バケツを抱えて。(あ、やばい)あたしはそんなあかねにこれから起こる事態を察すると自分に被害が被らない様、そっと部屋から出て少し離れて様子を見る事にした。(玄馬さんに掛からなければいいけど…)