その頃
その頃、玄馬さんに叩き飛ばされた乱馬は屋根の上で先程の事を思い出し呆けていた。
「(命狙われた事しか無かったから、気がつかなかったけど、シャンプーの奴可愛いじゃねえか。…あかねもあのくらい素直だったら……、なまえもまだ可愛げはあるけどやっぱりもうちょっと……)」
ばしゃっ!
「ぶわっ!?冷てっ!!」
すると突然、背後から襲い掛かった大量の水に、乱馬が後ろを振り返ると、そこには水が入っていた空のバケツを抱えた良牙が何故か切ない様な表情で佇んでいた。
「良牙…!何しやがるてめえ!」
「…俺はなあ、お前の事でヤキモチ焼くなまえさんを見て…っすっっっごく傷ついてんだ!!」
がんっ!
「ってえな、ばっきゃろー!!つうか、あかねなら兎も角、何でなまえがヤキモチ焼くんだよ!?あかねだって、あっちが勝手にヤキモチ……っ!…あ、あかね、なまえ…!」
良牙に勢いよく投げられたバケツが当たり華麗に吹っ飛んだ乱馬は、どうにか態勢を整え地面に降り立とうとしつつ叫び散らせば、突如背後に感じた気配に振り返る。するとそこには何故かあかねがニッコリと笑って立っており、そのまた後ろには様子を伺う様に覗き込むあたしがいた。
「ほんっと(なまえも)あんたも鈍感ね。あたしは気にしてないのよ?全然。そもそもあたし達、もう許嫁でも何でもないし。ねえなまえ?」
『(今の言葉を聞いた限り、やっぱり乱馬はあかねの事をしか考えてないよね。きっと乱馬にはあたしがヤキモチ焼こうが焼くまいが、どうでもいいんだろうな。…あれ、なんかまた急にムカムカしてきた)…そうだね。シャンプーと勝手にお互いの事知り合えばいいんじゃない?』
「!?なまえ…?」
『行こ、あかね』
「え、ええ(あら、珍しくなまえが怒ってる…自覚してちょっとは素直になってきたのかしら)」
「あっ待っ…!なまえっ…さん…」
ずんっ!
「ん…?」
「っ乱馬、殺す!!」
「っへ…?(ハッ)(俺、今は女だった…!)」
あたしとあかねが去った後、女である乱馬を視界に入れたシャンプーが殺意を露わにして乱馬へと襲いかかり始めた。
「男の時は求愛され、女の時は命を狙われる…か」
「本っ当に、お互いの事知り合う必要あるみたいね」
それを見ていた玄馬さんとなびきさんは他人事の様に考察すると、あたし達同様にその場から立ち去っていった。