乱馬の勝ち
「よそん家で暴れんなよ、お前はっ!!」
バキッ!
――ゴスッ!
すると、横から乱馬が割って入ってきたかと思えば、シャンプーの武器を高く蹴り上げた。武器は鈍い音を立てて折れると、高く空中に舞い上がり、一気に急降下する。それは長い様で一瞬であった為に、真下にいたシャンプーの頭へと直撃した。
「あらあら…」
「「「『……』」」」
ピクリとも動かなくなってしまったシャンプーにあたし達は黙って顔を見合わせた。すると、ハッと何かに気づき、沈黙を破ったのは良牙くんだった。
「かわいそうにこの女…。また"負けて"しまった訳だ」
「!じっ事故だ!!」
良牙くんの言葉に乱馬もハッと気付くと、思わずシャンプから遠ざかる様にして後ろへ飛び退いた。
「やだ、乱馬くんったら謙遜して。勝ったのよ!」
【KO勝ち】
「っだってだって今のは…!」
だが、流石、らんまの世界で天晴れな程にど天然なかすみさんは乱馬の言葉を謙遜と受け取り、きっぱりと乱馬の勝ちを主張した。その隣ではまるで他人事の様に玄馬さんも祝す様子を見せていた。確かに、不意打ちであれ、シャンプーが倒れてしまった状況では、乱馬の勝ちだと思う他ない。
「…という事は、男の乱馬も、命を狙われる事に…」
仮に、今のが勝負だとして、乱馬が勝ってしまったと言うならば。そう考えて呟いたあかねにあたしは、中国からずっとこうなると覚えていた光景を再び頭に思い浮かべた。(これがきっかけで、シャンプーは男の乱馬に……)(…あれ。なんか、中国にいた時は何も感じなかったのに、なんか胸騒ぎが…)
ぱか。
その時、気絶していたシャンプーが目を覚ました。
「……」
シャンプーは虚ろな瞳で乱馬を捉えるとよろよろと体を起こし滲みよる。
「わああ!お前は負けてない!事故だ!偶然だ!」
そんなシャンプーに乱馬はサーッと血の気を引かせると逃げ腰で慌てて後ずさる。
「見苦しいぞ乱馬!潔く死の接吻を受けてやれ!」
ドンッ!
だが、それを良牙くんが制し、勢いよく乱馬をシャンプーへ突き出す様にと押し出した。咄嗟のことに対応出来なかった乱馬は、良牙くんの思惑通りシャンプーに向かって勢い良く身体が倒れこむ。すると、シャンプーは乱馬を両手で受け止めた。
そして。
「ウォーアイニー」
んちゅ。
「ひっ?」
顔を近付けたかと思えば、愛を囁き、唇と唇を合わせ、接吻した。
「んなっ!!」
「ん…?」
『……』
そんな二人に、あたしは何故か苛立ちと心にモヤモヤとした感情を覚え、あかねと良牙くんは目を丸くさせていた。(…何でムカムカしてるんだろ)