じゃじゃ馬にさせないで! | ナノ


絶体絶命





(やばいやばいやばい!)


水を被って男になってしまったあたしは、完全にパニックに陥ってしまっていた。(こっこんな姿見られたら完全に変態…!らっ乱馬より変態扱いされる!!)絶体絶命の窮地に追いやられてしまったあたしの頭は今まで以上に混乱している。(やばいやばい!この世界にやってきた時よりもやばいって…!!)(…っとりあえず、電気が復旧する前にいち早くリンクから出てお湯を…!)だが、狼狽えているだけではどうしようもない。無理矢理にでも頭を働かせ、リンクから出ようと足を進めた瞬間。


ぐいっ


『!!!!』
「さあ、なまえさん!ここからは俺と試合に臨みましょう!俺とペアを…」



パッ



「おっやっと電気がついたぞ!」
「ふう、これでやっと…ん?」


「えっ…!?(なまえ、さん…!?)」




あたしの健全なる青春…人生は、儚く終わった。

(ああ…今すぐ消えて無くなりたい…!)


リンクから逃げようとした矢先、側にいた良牙くんに手を掴まれ、身動きが取れなくなってしまった。そして、続け様に電気が復旧し、会場内は明かりを取り戻してしまった。
あかねから借りた衣装は、上半身は幸いにも肌が隠れているものであったが、下半身は水着の様な形にヒラヒラのレースが纏われている。(こんなの…男になった今着ていたら完全な変質者だ…!)せめてもの抵抗だと、あたしは良牙くんに手を掴まれたまま、必死にしゃがみ込むと下半身を覆う様に出来る限り身を小さくした。



パッ



「またか!?」
「おいおい…どうなってるんだ?」
「ていうか、今なんかリンクの上の奴おかしくなかったか?」
「え?一瞬でよくわからなかった」


『(よ、よくわかんないけど助かった…!!)』


会場が明るくなったと共に絶望に陥ってしまったが、ものの数秒で再び会場内に暗闇が舞い戻る。上手く事態が飲み込めないながらにも、あたしは今までにない程の安堵をつくと、大きく胸を撫で下ろす。


「なまえ!」


その時、乱馬の高い声が頭に降り掛かる。

『!乱馬、今どこに…わっ!』

絶望を感じながらにも、一瞬にして、乱馬がリンク内に見当たらなかった事を覚えていたあたしが問いかけようと口を開いた矢先に、今度は頭上から何か柔らかい感触が降り注がれた。

『ちょ、何…!毛布!まさか、この暗闇も乱馬が…?』
「今の格好だとおめーが一番やばいだろっ。ほら、早くリンクから出ろ。どうせまたすぐに電気がつくぞっ」
『っ…ありがとう乱馬!良牙くん…ごめんっ』

どうやら、乱馬は水を被るや否や、あたしの身を案じて急いで毛布を(どこからか)手に入れて、再びブレーカーを落としてくれたらしい。そんな乱馬にじーん、と感動しながら毛布を頭から被ると、未だに手を掴む良牙くんを振りほどき、急いでリンクの外へと向かった。



「…おっおい乱馬っ今の…!」
「おめー、後でなまえに死ぬほど謝れよ」
「……!!」





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