じゃじゃ馬にさせないで! | ナノ


白鳥あずさの言う通り





ガキッ

「させるか!」
『乱馬!(たっ助かった…!)』


三千院帝の顔が寸前まで来ていたところで、乱馬が背後から三千院帝の顔を履いていたスケート靴で挟み込んでそれを阻止する。ホッと胸を撫で下ろしたが、ふと乱馬の背後で何かが飛び上がった影を捉えた。

『!乱馬上っ!』
「っ!」

それが白鳥あずさだとわかるや否や乱馬へ叫ぶが、時すでに遅かった。乱馬が上を見上げると同時に、白鳥あずさが顔面目掛けて蹴りを入れる。(スケート靴で蹴られるってやばすぎないか?)


「さ、邪魔者は消えたね」
『!こ、懲りない奴…!』

すると、それをあたしと共に傍観していた三千院帝が再びあたしへと向き合うと、グッとあたしへと前のめりに顔を近付ける。だが乱馬が蹴り飛ばされた今、先程まで塞がれていた手は解放された今、あたしは三千院帝の胸ぐらをガッと掴み上げた。

『ていっ!!』

そして、三千院帝を避ける為に後ろへと体重がかかる反動を利用して、思い切り投げ飛ばした。


「…僕の口づけを拒否するとは。なんて照れ屋なんだ」
「心底嫌がってるんですわ」

(白鳥あずさの言う通りだ。案外、仲良くなれそうな気がするけど、とりあえず今は試合に集中しないと…)だが、やはりと言ったところか三千院帝は投げ飛ばれた空中で身を縮め体制を整えるとスケートリンクにしっかりと足から着地した。そして口づけを拒否したあたしに流石と言ったものかとんだ勘違いを口走る三千院帝が放った言葉に白鳥あずさは辛辣に対応する。


『ふう…ちょっと乱馬、しっかりしてよ、もう』

あたしはやっと三千院帝に解放され息をつくと蹴り飛ばされた乱馬を担ぎ声を掛けた。


「必ず唇を奪ってやる!!」
『えっあいつまだ諦めてないの!?』

「…くそ、なまえ、どいてろ!」
『ん?えっ…ちょっきゃあ!!』

すると、やっと意識を取り戻した乱馬があたしの腰を掴んだかと思えば、宙に浮かせて思い切り投げ飛ばした。(何で!?)(し、死ぬ…!)


ドサッ


突然の事態にあたしは必死で宙を藻掻いたが、それは虚しくも徐々にリンクへと下降していく。スケートリンクに身体を打ち付けてしまう、と目を瞑った矢先に乱馬の背中が視界に現れ、あたしをおんぶする様にキャッチした。

『っぅあ!フェンスフェンスフェンス!』
「わかってるよ!」
『止まって止まって!!』
「止まらねーっ!!」

ホッとしたのも束の間に、乱馬が滑っていく前にはフェンスが立ちはだかっている。試合に向け付け焼き刃程の練習しか出来ていない乱馬には上手く止まる事など不可能であった。(今度こそ死ぬ…!)既にフェンスは目と鼻の先。あたしはこの世界にやってきた時の様に走馬灯を見ようと覚悟した。


じゃかじゃかじゃかっ!

ずしゃっ!


だが、乱馬も必死にどうにかしようと足をばたつかせた結果、フェンスの上まで登り切ると、空中で回転しながら、スケートリンクに何とか着地した。

「『はあ…はあ…』」

安堵と共に息を整えるあたしと乱馬には、もう出せる言葉は無く、ただひたすらに息を整え続けた。





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