目の前には天井と
乱馬が去った後、何故かあたしのせいだと非難されどこかへ行ってしまった乱馬を探すよう広間を追い出されてしまった。(良牙くんも一緒に探すって言ってくれたけど折角あかねといるんだしこういう時だけでも居させてあげた方がいいよね)(あたしってば何て優しい)手当の途中もあり救急箱を抱え乱馬が行きそうな所へと向かった。(やーっぱり居た)
『後ろがら空きだよー』
ぺんっ!
「!なまえ…」
まず道場を探そうと入口から中へ顔を覗かせれば案の定、乱馬が小さくしゃがみ込みいじけている姿が目に入った。あたしはそんな乱馬に息をつくと気付かれない様そっと近づき軽く頭を叩いた。
『もーいつまでいじけてんの?そんなにあたしの言った事気にしてるの?』
「…お、おかしかったら笑えよ」
『あははははは』
「何がおかしいっ!」
乱馬の言葉通りに笑うと何故か怒られた。そんな乱馬にあたしは笑うのを止め、今度は真面目な顔で口を開いた。
『本当にファーストキスだったの?』
「……」
乱馬は再び黙り込む。かと思えば「どーでもいいだろ」とそっぽを向いた。(ファーストキスだったんだな)あたしはそんな乱馬の反応に確信をつくと『そうだね、どーでもいっかー』と適当に返し、救急箱から消毒液を取り出した。
『それにしてもあんな簡単にキスされた乱馬も修行が足りなかったんじゃないの?』
「いてっ」
『口の割には隙が多いしねー』
「……」
手当をしながら挟む言葉に乱馬は一向に返してこない。思った以上にキスされた事がショックだったんだろうか。あたしが再び言葉を発そうとした瞬間。
トンッ
視界がぐるり、と展開した。
『!!』
「人の事言えるかよ」
今まで黙っていた乱馬があたしの不意を突き肩を指で軽く後ろへ押し、背後からもう片方の手であたしの腰を前へ押し出した。油断していたあたしは姿勢を崩してしまい、目の前には天井と乱馬が顔が映し出された。(あれ…ちょっと…この場面って…)
「!ごっ誤解すんなよ!べ、べ別にキスしよーとした訳じゃ…!」
思ったよりも顔が近いこの状況に、ハッと乱馬が我に返り勢いよくあたしから離れる。あたしはドキドキと鳴る心臓を落ち着かせながらも今の状況に見覚えがあると思考を巡らせた。(今の場面ってあかねと乱馬がキスしそうになった場面じゃ…)どうしてあたしがこんな事に、と整理しようと頭を捻っている中乱馬は言葉を続けた。
「本っ当にそんな気まっったくなくてっ…」
『(…そこまで言われると何かむかつく)わかってるよ。どーせキスする度胸なんかあるわけないもんね』
「!んな事言ってると本当にやるぞっ!」
『出来るもんならやれば!(やばい何言ってんだ自分)』
これぞ売り言葉に買い言葉。乱馬の言葉に思わずムキになったあたしと更にムキになった乱馬はお互い睨みあうと一歩も引けぬ状態となっていた。