完遂
「シャルロット!」
「あっ!」
あかねが手を広げ良牙くんを向かれいれようとしたが、寸前で白鳥あずさに良牙くんは抱えられてしまった。
「あずさちゃんがプレゼントを差し上げます」
そしてどこからか首輪を取り出すと、カチッと良牙くんの首にかけた。
「きゃーっかわいー!」
「ちょっと酷いじゃない!首輪なんて…って何よこれ」
それを見たあかねが白鳥あずさから良牙くんを取り返し首を見ると、シャルロットと書かれた名前が書かれている事に顔を歪ませた。
『(可愛いっ…けどそんな事言ったら怒られそう)ちょ、ちょっと。まだシャルロットになった訳じゃないのに…』
「っすぐ外してあげるからね!」
「ぴーっ!(苦しいっ!!)」
「無駄ですわ。鍵をかけちゃいました。首輪を外したかったら試合に勝つ事ですわね」
白鳥あずさはそう言ってにっこり笑うと鍵をあかねに見せつけた。あかねはそんな白鳥あずさにわなわなと体を震わせキッと睨みあげた。
「ふんっ!黄金ペアか何だか知らないけどあたしと乱馬が組めば…!」
『…あ…ごめんあかね、乱馬の事置いてきちゃった』
「え゛」
あかねの言葉にふ、と乱馬の存在を思い出す。あかねが良牙くんの元に行き、あたしもあかねの後を追いかけてしまった今、滑れない乱馬はと言うと。
「わーん!あかねもなまえもブタんとこ行きやがってー!ばかー!倒れるぞー!もーダメだぞー!」
少し遠くで倒れないようバタバタと手を動かしながら何とか立っていた。あたしとあかねはそんな泣きわめく乱馬に思わず力が抜けるように呆れてしまう。そしてあたしがもう、と声を漏らしながら乱馬の方へ向かった瞬間、乱馬は再び三千院帝に抱き上げられた。(あらら)
「僕がスケートを教えてあげるよ」
「余計なお世話だっ!離しやがれ!」
「そう、残念だなあ…。それじゃあせめて、さっき助けたお礼をしてよ」
三千院帝は乱馬を抱えながら優雅に舞うと乱馬の体を傾かせ、ゆっくりと顔を近付けた。
そして。
ちゅ。
「!」
『(や、やっぱり完遂だったか…!)』
今度は見事に唇を奪われてしまった。あかねと良牙くんは目を見開かせ固まり、あたしもやはり勘違いではなかった、と思いながらその光景に見入ってしまっていた。
「……う、わあああああ〜ん!!!」
「あ、きみ…!」
乱馬はというと、よっぽど…よっぽどショックだったのだろう、方針状態で顔が崩れてしまっていた。かと思えば三千院帝から離れ、泣きながらどこかへ走り去ってしまった。
「あんなに泣くなんて…。なんて純情な子だ」
「(そりゃあ…)」
『(相手が男じゃ泣きたくもなるよ)』
そんな乱馬に三千院帝が感動していたが、あたしとあかねは男同士でキスしてしまった乱馬に同情していた。
「ん?君…挨拶がまだだったね」
そんな中、三千院帝が今度はあたしの前へとやってきた。
『…あたしの事は気にしないで下さい』
「こんな可愛い子を気にしないなんて事出来ないよ」
『(こんな女たらしに乱馬は…可哀想に)…はあ』
あたしに愛想を振り撒く三千院帝にあたしは深いため息をついた。