挑戦状はナルト
『Pちゃんの為にも頑張ってあげてね〜』
「は?何がだよ」
あたしの言葉に乱馬は首を傾げた。
『だってあかねが受けた勝負、ペアスケートだよ』
「だからって何で俺なんだよ」
「『……』」
乱馬の言葉に思わずあたしは途中から話を聞いていたクラスメートと顔を見合わせた。
『だって』
「許嫁だし?」
「だよなあ?」
「俺は出ねーぞっ!!」
何を当たり前な、と皆で乱馬を見たが乱馬はてんで出場する気はないらしい。
「君、ごめんね」
そんな中、乱馬の後ろで三千院帝があかねに話しかけている姿が目に留まった。乱馬もあたし達の話を聞き呆れる間にもちら、とあかねと三千院帝を見遣った。
「パートナーが迷惑かけてしまって。…お詫びと言ってはなんだけど…」
スッ
「きゃーっ!」
「な゛っ!!」
お詫びと言って三千院帝はあかねの顎に手を添えると口付けようとゆっくりと顔を近付けた。(そう言えばこの男、かなりの女たらしだったっけ)あたしは呑気にそんな事を考えながらも止めようとしたが、どうやら必要ないらしい。
べちっ!
「……」
突然、三千院帝の頬にどこからかナルトが飛んでいき、貼り付いた。三千院帝はあかねから顔を離すとナルトを飛ばした犯人である乱馬へと顔を向けた。そして頬に貼り付いたナルトを取るとフッと笑った。
「君からの挑戦状、確かに受け取った。勝負は一週間後、場所は我がコルホーズ学園高校」
「きゃーっこの挑戦状可愛いーっ」
「種目はペアスケート」
「フランソワーズっフランソワーズ!」
「いいな?」
「勝手にしな」
三千院帝はナルトを挑戦状だと受けとると乱馬へ勝負を申し出た。乱馬はそれに応えると、席を立ち店を後にした。
「フランソワーズ!フランソワーズ!」
「…緊張感を…台無しにしやがってー!!」
「これあたしんのー!」
『(…こんなんでよく黄金ペアが誕生したもんだ)』
その合間にも、白鳥あずさは挑戦状のナルトを気に入り三千院帝から奪い取っていた。あたしとクラスメートはそんな二人を見て呆れながら乱馬の後に続き店を出ることにした。
*****
クラスメートと別れ、あたしとあかねと乱馬は天道家への帰路を歩いていた。
「…言っとくけどなー」
そんな中、ふと乱馬が小さな声で呟いた。
「ヤキモチ妬いた訳じゃねーんだからな。あーゆー女たらしは生かしておけねーから…」
「…余計なお世話よ」
「!あのなっ人が折角助けて………」
乱馬の言葉にあかねがばっさりと言葉を返すと乱馬は素早くフェンスから降りた。そしてあかねへと言葉を繰り出したがふと、何かを考えたのか言葉を止めた。
「…おめー、まさかあーゆー男が…」
「ぶわーか」
まさかタイプだったのか、と乱馬が言葉を出すがあかねはそれを遮ると、乱馬の方へ振り向きグッと拳を握った。
「ナルトがあと0.1秒遅かったらあいつの顎叩き割ってやったのに」
「…ほんっとに色気がねーなー」
「そーね。間違って好きな男が出来れば色気出るんじゃない?」
『…(二人ともほんっとに素直じゃないんだから)』
暫く二人のやり取りを見ていたあたしは口には出さないがそう思い呆れていた。だがそんな二人を見て羨ましいと思う自分もいた。