先に落ちた方の負け
「どこまでもしぶとい方ね…ってい!!」
小太刀はリングに着地したあたしを見ると、容赦なくトゲ付きのクラブを繰り出した。あたしはそれを背中を反らせて避けるとそのまま床に手を付き、逆立ちすると足でクラブを挟んだ。
『そろそろ決着…つけましょーかっ!!』
ビュンッ!!
そしてそのまま勢いよく足を振り切り、小太刀を吹き飛ばした。
【おーっと!九能小太刀選手が場外へー!!】
実況の言葉通り、小太刀は場外へと飛んでいく。このままリングアウトとなれば勝てるのだが、大人しくリングアウトしてくれる相手ではないらしい。小太刀は宙で舞いながら、胸元から何やら笛を取りだし吹き始めた。
グラッ!
『…ん?』
その時、足元が揺れたかと思えばリングが突然大きく動き小太刀が着地する場所まで移動した。
『な、何よこれ…!』
「ほほほほほ!この私にリングアウトはあり得ません!!」
あたしが驚いていると小太刀は華麗に着地を決め再び高笑いした。
『……(まさか)』
あたしはそんな小太刀を見ると床へと視線を落とし、しゃがみこむとリングを殴り始めた。
ベリッ!
【あーっと!リング下からレオタードの一群!】
『ど、どこまで姑息なの…!』
勢いよくリングに張られたマットを剥がしとると思った通り。リングの下には女学院の新体操クラブであろう生徒がいた。生徒達は姿を見られるとそそくさとリング下から退場していった。
【さあ、マットが取り払われた今、残る足場はコーナーポストとロープのみ!先に落ちた方の負けです!!】
残された足場が限られた今、決着は近付いてきている事がわかった。(空中戦は乱馬と玄馬さんとの朝稽古でよくやってたし…今こそ)あたしは今の状況にニッと笑うと勢いよくコーナーポストから飛び上がった。
『今度こそ決着つけてやる!!』
「しゃらくさいっ!!」
そんなあたしに小太刀は素早くリボンを振り回す。
ビンッ!!
『!?』
その時、何故か鎖に引っ張られ体勢を崩してしまった。鎖の先では良牙くんがロープにしがみつき、あたしを妨害していた。
『ぴっPちゃん!(さっき見えてないフリした挙げ句水までかぶせて助けてあげたのに…!そこまでして、小太刀と乱馬を交際させたいのか!)』
「ぶいいーっ…!(なまえさん、すまないがこの試合だけは負けてくれ!)」
『くっ…!』
あたしはそんな良牙くんに対し必死に宙を泳いでいた。
「カミソリフープ!」
そんな隙だらけのあたしに小太刀は再びカミソリの付いたフープを投げやった。あたしはどうにか、フープを避けロープに着地しようと足を着いた瞬間、フープによってロープが切れてしまった。
(やばい…!ええい!)
再び体勢を崩したあたしはロープにしがみついていた良牙くんを引き剥がすと勢いよくコーナーポストへと巻き付けた。(良牙くんごめん!でも君が悪いんだよ!)巻き付いて短くなった鎖をピンと張り足場を作り、そこに着地するとふう、と息をついた。そしてコーナーポストへ移動すると巻き付けた鎖を外し良牙くんを抱き上げた。
『Pちゃんお願い〜!あたしどうしても小太刀には負けたくないの〜っ!』
「ぶいぶいっ!(だけど…!)」
シュルルルッ!
ばしっ!!
「『!』」
その時、あたしの首にリボンが巻き付いた。