怒り沸騰中
カーンッ!!
その時、試合開始のゴングが鳴り響いた。
【格闘新体操無制限一本勝負の開始です!】
『って言われても…!』
実況者の声に更に場内は沸き上がる中、あたしは良牙くんと鎖で繋がれてしまい混乱しながらも、試合へと直面してしまう。
【この試合、素手による攻撃は反則。どちらかが完全にダウンするまで続けられます。なお、リングから落ちた場合直ちに負けが宣告されます】
『わーっ!言った傍からリングの外に行こうとしないでーっ!!』
説明があった傍から何故か良牙くんはリングの外へと向かおうと暴れだす。必死に抵抗しながらふと、あたしはある事が頭に過った。
(もし、負けた場合の乱馬と小太刀の交際を知っていたら…。良牙くんの気持ちからすれば、あかねが好きなのだから、負けさせようとしてる…?)
そう考えてしまえば、昨夜乱馬を徹夜で特訓させたのも、体を弱らせる為の作戦だったと考えられる。
「ぶきーっ!(なまえさん負けてくれーっ!)」
『わーっ!お願いだから暴れないでー!!』
是が非でもリングの外へと向かう良牙くんにきっと、いや、十中八九そういう事なのだろうと理解したあたしは半泣きになりながらも良牙くんを必死に押さえ込んだ。そしてよりによって、こんな厄介な子ブタを繋いでくれた小太刀への怒りがふつふつと沸き上がった。
『っ悪いけど、勝たせてもらうんだから!』
偶然とは言えども負けさせる気満々のブタを繋がれ試合開始早々、怒りが沸騰したあたしは一気に小太刀へと走り出す。
シュッ!
そして、走りながらリボンを振り回し小太刀へ襲い掛からせる。だが、小太刀はいとも簡単にロープでそれを払いのける。
「ほほほほ!そんなもので私を倒せるとでも!?」
【流石は格闘新体操の華、九能小太刀選手!ロープを棒のように扱っております!】
ビュッ!!
小太刀はロープを素早くあたしへと突き出す。あたしがそれを避ける間に良牙くんが身動き出来ないよう制止していたあたしの腕から離れ、またもやリングの外へと走り出す。
『!わっわっ…!』
そのせいで、鎖があたしの体に巻き付き今度は自分自身が身動きとれなくなったところを、小太刀はあたしの頭目掛けてロープを叩き落とした。
【おーっとこれはっ…!ロープに見せかけた棒でした!!】
どうやら、棒のように見えたロープは本当の棒だったようで、頭に受けた衝撃は思ったよりも大きかった。
『っく…!』
「ぷぎーっ!(なまえさんっ!大丈夫ですか!)」
『泣いて心配するなら暴れないでー!(可愛いから許しちゃうけど!!)』