妹をよろしく
「如何ですか?試合で乱馬様を駆けると言うのは」
「な…」
「なんですってえ!」
小太刀の提案に乱馬よりも、あかねが反応した。(何だかんだ言って乱馬を取られるのは嫌なんだなあ)(…あれ、違う?)
「冗談じゃ…」
「いいじゃないか、あかねくん。早乙女と別れたくば負ければいいのだ」
「ほほほほ!わざと負けなくてもぎったぎたに叩きのめしてあげますわ」
「(ぬぬぬ゛〜)」
『(あ。あかねに火がついた)』
小太刀の言葉に最早乱馬の事など頭にないようで、あかねは己のプライドに火がついたらしく「絶対負けないわよ!」と闘志を燃やしていた。
「乱馬様…」
そんなあかねの言葉を聞くと小太刀は乱馬へと視線を向けた。
「試合が終わったら貴方は私のもの…では、おさらばっ!」
そしてリボンで円を描くと黒バラの花びらを宙に舞わせ軽々と飛び去っていった。
「全くとんでもない妹だが…とにかく早乙女乱馬」
小太刀が去った後、九能先輩は早乙女乱馬と向き合うと肩をぽん、と叩いた。
「妹をよろしく頼むぞ」
「…ん?」
そんな九能先輩の言葉に耳を疑った乱馬はもう一度聞き直す。
「ちょっと待て。今なんといった」
「妹をよろしく頼むぞと言ったんだよ」
「「……」」
どうやら聞き間違いではないらしい。(あ、そうか。乱馬とあかねは二人が兄妹だって事知らなかったんだっけ。…わかりやすいと思うんだけどなあ)
「兄の口から言うのも何だが…あいつは陰険で執念深く、気立てが悪いが、根もひねくれている」
『(人の事言えないんじゃ…)』
「じゃ、あかねくん。試合で怪我せぬように。なまえくん、今度は君にもバラをプレゼントしよう」
『いりません』
九能先輩は気を取り直しあたしとあかねに声を懸けると、ぶつぶつと呟きながら去っていった。
『あっそろそろ予鈴鳴っちゃう。あかね、乱馬、早…』
あたし達もそろそろ教室に行かないと、とあかねと乱馬へ振り向くと、未だ九能先輩と小太刀が兄妹だった事に衝撃を受け固まっていた。
「く…九能の妹…」
「言われてみるとそっっくり…」