兄の許し
「あかねくん…君の優雅な新体操…目に浮かぶようだ」
「…げ。九能…」
ふと、乱馬が前方へ目を向けると真っ赤なバラの花束を抱えた九能先輩がやってきていた。
「激励に情熱の赤いバラを捧げよう…」
どうやら、九能先輩にもあかねが新体操の試合に出る事が耳に入っていたようで(知らない訳がない)真っ赤なバラの花束はあかねへのプレゼントらしい。そしてそれをあかねへと渡しに来たのだろうが、何故か乱馬の元へと歩み寄っていった。
「あかねくん好きだっ!」
ドッ!
そして勢いよく乱馬目掛けて木刀を斜め上に振り上げた。乱馬はそれを素早く避けると九能先輩が振り上げた刀の上に着地し、間髪入れずに九能先輩の顔面に蹴りを食らわした。
「いきなり何しやがる」
「…早乙女乱馬。貴様、僕に何の恨みがあるのだ」
「あのな…」
『(朝から奇襲をかけるなんて流石兄妹…)』
「ら、ん、ま、さ、ま」
「んー?」
今朝の光景を見てあたしがそんな事を考えているといつの間にか小太刀が乱馬の背中にぴったりとつっくついていた。それを見た九能先輩は突然唸りだした。
「う〜ん……よしっ」
「なんだよっ」
そして結論が出たように乱馬と小太刀の体をぽんっと叩いた。
「交際を許す」
何と、九能先輩は小太刀と乱馬の交際を許した。(…恋敵が居なくなるのなら自分の妹の彼氏でもいいんだ)兄の許しを得た小太刀は頬を染め今度は正面から乱馬に抱きついた。だが乱馬は瞬時に「ちょっと待て!」と小太刀から離れた。
「勝手に決めるなっ!俺はおめーと付き合う気なんか…」
「私が嫌いなのですかーっ!!」
「ひいいっ!」
乱馬ははっきり断ろうと凄んでは見たが、言葉を言い終わらぬ内に小太刀は泣き出し、物凄い形相で乱馬へ歩み寄る。
「いや、だから、あの、俺には」
そんな小太刀に負けて後ずさる乱馬は都合が良いように「許嫁がいるんだっ」とあかねの後ろへと隠れた。(親が勝手に決めただけとかいつも言うくせに)
「ちょっと」
「しょーがねーだろっこの際」
「だらしないわねー」
「いーなずけえ〜?あなたが?」
それを聞いた小太刀はあかねをじろじろと見遣る。
「一応ね」
「…ふっ面白い」
すると小太刀は鼻で笑うとそう言い、突然あかねにリボンで攻撃を仕掛けた。あかねは思わずそれを飛び避ける。それを見た小太刀は再び笑うと言葉を続けた。