僕と風邪
「…けほっ…」
しまった、僕は思った。
現在の体温は38度4分、明らかに風邪をひいた。
風邪をひいていること自体は辛いけどまあどうってことない、でも僕が風邪をひくと困ってしまう人が一人いるんだ。(困るっていうか死にそうになるっていうか)
現に今もおろおろしながら僕のベッドの近くにいる。
「…タケさん、風邪…うつりますよ?」
榎本タケロウ、自称スナイパーの居候。
生活適応能力皆無な彼はこの前僕が海外研修へ行った時死にそうになった。(カップ麺も作れないんだよ!今までどうやって生きて来たんだよ!)
タケさんは細い眉をハの字にしながら落ち着かない様子で部屋の中を歩き回っていた。
「なぁ、大丈夫か?」
「…38度4分の人間が大丈夫そうに見えますか…?」
心配してくれるのは嬉しいけど今は放って置いて欲しい。
早く治さないと本当にタケさんの生死に関わる。(僕も危険だけど)
そんなことを思っていたらタケさんは何か思い付いたような顔をすると携帯に電話をかけ始めた。
…は?
受話器に向かって話し出すタケさんに僕は絶句した。
タケさんが日本語以外を喋ってる…。
え、今の何語!?
英語は習ったことあるしわかるけどタケさんが今使ってるのは英語じゃない。
ん…?今聞き覚えのある単語が…。
えーと、確か…フランス語だ!!
そうだよ、少ししか分かんないけど確かフランス語だよ!
「ヒナちゃーん、今電話したら友達が料理作りに来てくれるってー。」
「…そう、ですか…。」
僕はもう何も考えたくなかった。
どうしてタケさんがフランス語がペラペラなのかとか、どうしてフランス人の友達がいるとか、どうして家の主の許可無しに友人を呼んだとか…。
突っ込むところが多過ぎる。
僕はタケさんの友人が来るまで一眠りすることにした。
後日談だけど、タケさんのフランス人の友達(ミシェルさん)の料理は凄く美味しかった。(消化に良いものを作ってくれたんだ)
あと、タケさんがフランス語の他にもあと3ヵ国語ほど話せる事もわかった。(イタリア語とドイツ語と中国語らしい)(だけど英語はからっきしなんだって、不思議だ)
なんか…疲れた。
END
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