僕と幼馴染



僕こと鴻上ヒナには坂田リエって言う名前の幼馴染みがいた。
小学校卒業までだからもう十数年近く会って無いけど今でも鮮明に覚えている。
一人称は俺で男口調、得意なものは体育と喧嘩。
女の子だけど喧嘩が物凄く強くて他校にまで彼女の武勇伝は伝わっていた。(最強の男女ってね)



「久し振りね!私坂田リエだけど…覚えてる?」



そんな彼女が今僕の目の前にいる。
昔は短かった栗色の髪も今は肩に付くぐらいの長さになっていて緩くパーマがかかっていた。
服装も口調も変わってしまったけど切れ長の目だけは昔と変わって無くて僕はどこか安心した。



「覚えてるよ。美人になったね、リエちゃん。」

「あははっ!お世辞なんかいいよヒナ。」



照れ笑いをするリエちゃんを見て思わず僕も笑ってしまった。
…なんだかこんなに平和な時間を迎えたのは久し振りかもしれない。(どこぞの居候アロハシャツのせいでね)
ほわりと温かい気持ちになった僕の背後で茶化すような声が聞こえた。



「彼女持ちか?こんなかわいー子を…いやあ隅に置けねぇな。」



声の持ち主は予想通りタケさんで、声色同じくにやにやとした顔でこちらを見ていた。
否定するのも面倒くさくて(だって中学生みたいに冷かしてきそうじゃないか)目線を外せば不審そうな顔でタケさんと僕を見比べるリエちゃんが視界に入った。



「…ヒナ、この人と知り合い?」

「え、う…うん。」

「どーも、ヒナちゃんの家に居候してる榎本タケロウっす。」



やばい!!
タケさんの口からヒナちゃんって単語が出た時僕はハッとした。
僕が昔からかわれてた時、いつもヒナちゃんと呼ばれていた。
リエちゃんは僕をそんな風に呼ぶ奴をことごとく潰して来たのだ。
流石のタケさんもやばいかも…そう思った時にはもう遅くて、タケさんは思い切り殴り飛ばされていた。



「テメェ…ヒナに向かってなんて口利いてんだよ!!ヒナは男なんだからちゃん付けはいらねぇだろうが!それともなんだ?それは俺に対する挑戦か?だったら受けて立とうじゃねぇかこの野郎!!」



…リエちゃん、あのキレのいいパンチは健在だったんだね。(腕の動きが見えないよ)
全身から殺気が溢れ出ているリエちゃんと珍しく焦っているタケさんの凄まじい攻防戦。
僕、なんだか凄いものを見ているみたいです。
人は十年そこらじゃ変わらないことと、タケさんも苦戦する相手が存在することを知ったある日。





END

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