僕と取り越し苦労



『ちょっと出かけて来るなー。

タケさんより』



リビングに置いてあった僕宛てのメモを見てから3日が過ぎた。
あの日以来タケさんを見てない。(あ、そう言えばショウゴさんもだ)
ちょっとって言ったくせに…どこの世界にちょっと出かけるだけで3日帰って来ない人がいるんですか。
タケさんは一人じゃろくに家事も出来ない。(僕は忘れないよ、海外研修から帰って来た日のことを)
一体どこをほっつき歩いてるんだろう。
そんな事を思いながら新聞を読んでいたらチャイムが鳴った。



「はーい……タケさん?それにショウゴさんと…どちら様?」



玄関を開けたらタケさんとショウゴさん、僕とショウゴさんくらいの歳の知らない男女二人組がいた。(タケさんはなぜか気絶していて男の人に担がれてた)
タケさん達の知り合いって言うことはまたそっち系の人なんだろうね。
首を傾げる僕を見ると金茶の髪色をしたボブカットの女の人が口を開いた。



「はじめまして、馬鹿アロハ…失礼、先輩がお世話になってます。あたしの名前は小条チサト、それで隣りにいる黒いのが狛犬よ。」

「ち、ちょっとお嬢!狛犬じゃないッスよ狛井ケイタッス!」

「きゃんきゃんうるさいわよ馬鹿犬。」



小条さんはギロリと狛井さんのことを睨み付けた。
…うわぁ、狛井さんが他人に思えないぞ。(ひょっとして僕と同じような境遇なんじゃないかな)
狛井さんは短い眉を思い切りハの字にしながらうつむいている。
それを見る小条さんとショウゴさんはなんだか楽しそう。
嗚呼、いつも自分が置かれている境遇そっくりで溜め息が出た。



「おっと、大切なことを忘れていました。ボク達は先輩を届けに来たんです。ほらケイタ君、先輩を降ろして。」

「あ…はいッス。」



今思い出したかのような(実際そうだったみたいだけど)ショウゴさんの言葉で狛井さんは肩に担いでいたタケさんを降ろす。(ふと気になったけど…この人大の男一人肩に担いでここまで来たのかな)
降ろされたタケさんを見れば所々傷があった。
もしかして…そっち系で何かやばいことでもあったのかな。(タケさんスナイパーらしいし)
不安になってショウゴさんをちらりと見るとショウゴさんはにっこりと笑って言葉を紡いだ。



「ご安心を、ヒナさん。先輩は外出先で迷子になった挙句野犬と喧嘩をしてこうなっただけですから。」

「先輩から電話がかかって来た時は驚いたわ。珍しく真面目な声色だったからね…。」

「え…じゃあ今まで帰って来なかったのは迷子になってたから…?」

「そういうことになるッスね。」



心配させやがってこのダメ人間。
僕はスリッパでタケさんの頭を力一杯叩いた。
小気味好いその音を聞きながらタケさんが目を覚ましたら何から文句を言ってやろうかと僕は考え始めた。(何時頃帰れるか大まかな時間を書くとか知らない場所に行く時は気をつけるとか後輩に迷惑をかけるなとか!)
とりあえず本日の教訓、タケさんが一日で帰って来なかったら携帯に電話しろ。(あ、そう言えばタケさんの携帯の番号知らないな…)
よし、文句よりも先にまずそれを聞こう。
僕は迷惑かけられっぱなしのタケさんの後輩達にお辞儀をすると中に入るよう促した。





END

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