僕と弟分



「ヒナにーい。」

「ぐぇっ。」



仕事の帰り道、どこか嬉しそうな間延びした声が聞こえたかと思ったら後ろから抱きつかれた。(うわ、変な声出た)
転びそうになるのを必死に耐えてタックル、もとい抱きついてきた人の顔を見る。
……あれ?



「…ラク、くん?」

「やふー、楽ちゃんでーす!」



へにゃりと笑いながらピースをするのは従姉妹の北上ラク君。
小さい頃は僕の後ろに付いて行動してた時と変わらない笑みにこっちまで笑顔になる。
ラクくんとは仲良かったんだけど七つ違いだからラクくんが小学校に入学する頃には僕はもう中学生であまり遊んであげられなくなっちゃったんだよね。
それからしばらくしてラクくんはおじさんの仕事の都合で海外に行っちゃってそれ以来会っていなかった。
それにしても…ラクくん大きくなったなあ。(そこ、おじさんとか言わないでよね!)



「大きくなったね、ラクくん。」

「へへー育ち盛りだしね。俺の小さい頃の目標はヒナ兄よりでっかくなることだったしー。目標達成間近かもー。」

「………。…ラクくん、背筋ピンとして。」



依然僕に寄りかかったままのラクくんを真っ直ぐに立たせる。
うん、ヒナちゃんとかヒナ子とか言われてる僕だけどさすがにラクくんよりは身長あるでしょ。(ああは言ってるけどラクくん華奢だしそんなに身長ないはず!)
僕の男としてのプライドを守るためここで背比べをしておかなきゃいけないんだ!



「…。」

「…。」

「…。」

「…ヒナにー?ねえ、黙り込んじゃってどうしたの?」



嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
真っ直ぐに立ったラクくんの視線は僕と同じだった。(僅かに僕の視線の方が上のように思うのは本当のことなのか僕のプライドからなのか)



「つかぬことをお聞きしますが北上ラクくんは現在何センチですかね。」

「へ?えーと…168cmだよー。でも毎年3、4cm伸びてるし来年には170cm越えるんじゃないかなー。」



…!!
ひ、170cmを…!?
だらだらと汗が流れる気がした。
だって、僕は苦労して苦労してやっと170cmっていう身長を掴みとったんだよ!?
なのにそんなあっさりと言われたら僕もうどう反応すればいいかわからない。(泣きたい、泣きたいよ!)
きっと僕は今いろんな意味でぐちゃぐちゃな顔をしてる。
そんな僕を見てラクくんはのんびり屋なりに慌てたらしく焦ったように手をせわしなく動かしていた。(小動物ですか)



「だ、大丈夫だよヒナ兄!大人になっても身長伸びた人だっているんだからさー!」

「あはは…励ましてくれてありがとね、ラクくん。」

「本当だってばー!」



かわいい弟分だけど次会ったときには僕よりも大きくなってるかもしれないと思うとなんだか切なかった。
…とりあえず家に帰ったら牛乳を飲もうかな。





END

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