僕とマッドサイエンティスト



研究者って言うのは探求心旺盛な奴が多い。
それは良いことなんだけど、行き過ぎた探求心を持つとその人は周りからはマッドサイエンティストと呼ばれること間違いないだろう。



「ぎゃああああ!!」



ある日の日曜日。
せっかくの休みだから思い切り寝ようと思っていた僕はタケさんの奇声によって強制的に目覚めさせられた。(うるさいよ馬鹿アロハ!)
イライラしながらタケさんがいる部屋の扉を思い切り開ける。
今日と言う今日こそタケさんに常識を叩き込んでやるんだから!



「タケさん!!朝っぱらから何叫ん……」

「ヒ、ヒナちゃああああん!!」



タケさんの情けない声を耳にしつつ僕は絶句した。(人って不可解な事が起こると動きが止まるんだね)
タケさんだけがいるはずの部屋にはなんと白衣のお兄さんがいたのだ。
しかもそのお兄さんはただいるだけならまだしも(いや、よくないけどね!)、両手に注射器やらメスやらを持っていたのだ。(怖い!怖いよ!)
僕と言う第三者の登場にお兄さんはくるりと振り返った。(いや、くるりって言うかゆらりって言うか…)



「おやおや、可愛らしい方ですねぇ先輩。」

「かっ可愛らしい…!?」
「先輩の新しい彼女さんですか?」

「お、おいショウゴ!ヒナちゃんは男だから!」

「ケケケ…これは失礼。ボクは橋田ショウゴと申します。」



…個性的な笑い方だな。(ケケケって笑い方をする人は初めて見たよ)
橋田ショウゴって名乗った人は色素の薄い茶色の髪にこれまた色素の薄い若干茶色がかった切れ長の目が銀縁の眼鏡から覗かせている僕より一歳か二歳くらい年上の人。
タケさん以上に怪しい人だな、僕は思った。(ああもう面倒事は嫌なのに!)



「えーと、橋田さんは…」

「ショウゴです。」

「…ショウゴさんはどうしてここに?」



注文の多い奴だと思いながらも尋ねればショウゴさんはちらりとタケさんを見やった。
途端に肩をびくつかせるタケさん。(嗚呼、この人の事が苦手なんだね)
聞かずして二人の関係がわかった気がした。



「ここ数ヵ月先輩から連絡が無かったんで死んだかと思って探してたんですよ。そしたらこんなところにいて…。」

「俺はお前の実験台になるのが嫌だから逃げたんだよ!」

「ケケケッ!どんなに毒薬を投与しても死なない貴方が悪い!気になって気になって仕方が無いじゃないですか!」

二人の話を聞いていて僕は瞬時に察した。
タケさんもショウゴさんも絶対に堅気の仕事についてない!(タケさんは最初からそうだと思ってたけどさ!)
じゃなきゃ実験台だの毒薬だのって言う単語が出て来るはず無いんだ。
…それにしてもどんなに毒を盛られても死なないタケさんって本当に人間なんだろうか。
僕はちょっぴり疑問に思った。
そんなことを考えていたらいきなりショウゴさんが近寄って来て僕の顔を覗き込んで来た。(うわぁ!ホ、ホラー!!)



「ヒナさんでしたっけ?」

「え…あ、はい。」

「貴方にも興味がわきました。先輩が赤の他人とこんな短期間で打ち解けるのは非常に珍しい。」



是非とも今後の研究対象にさせていただきたい。
銀縁眼鏡の奥で切れ長の目が細められる。
神様、平凡な生活を望むことはもう無理なのでしょうか。





END

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