僕と幼稚園時代



ぼくは、おおきくなったらリエちゃんのおよめさんになりたいです





たんぽぽぐみ
こうがみヒナ





「…何見てるんですか。」

「!!」



自室の扉を開けると中にはタケさんがいた。
タケさんは僕が入って来るや否や急いで何かを服の中に隠す。(子供の万引きみたいですよ)
そして素知らぬ顔で言うのだ。



「おかえりヒナちゃん。今日のゆうひゃ…夕飯なんだ?」

「動揺し過ぎです。」



ゆうひゃってなんだよ。
隠そうとすればするほどボロを出すタケさんが逆にあわれだ。
ここはタケさんのためにも気付かなかったふりをした方がいいのだろうか。(でもそれも大人としてどうなんだろう)
しかしそんな僕の気の利いた考えもタケさんが発した次の言葉で台無しになった。



「べ、別にヒナちゃんの幼稚園の時のアルバム見てた訳じゃないからな!違うんだからな!」

「見たんですね。」

「あ!!」



…この人、頭弱い。
僕はもはやつっこむ気にもならなかった。(このまま何も言わなければ僕も目を瞑ってあげたのに…馬鹿だなぁ、タケさん)
大きく溜め息を吐く僕を見てタケさんはおろおろと僕の周りを歩き始めた。(あれ、なんかデジャヴだ)
大型犬を飼ってる気分だよ。
…まあ、こんなはた迷惑な大型犬は飼いたくないけどね。



「ごめんな、ヒナちゃん!ヒナちゃんの部屋の扉が少しだけ開いてたから興味本位で入って本棚物色してたら幼稚園の時のアルバム見つけてさ…。」

「扉が少し開いてても本人がいないのなら入らないでください。…それにしても幼稚園の時のアルバムですか…。」

「ああ!ヒナちゃんリエちゃんの嫁になりたいって書いてたぜ。」



それか。
おぼろげだが確かに書いた記憶がある。(確かリエちゃんは僕のお婿さんになるって書いてた気が…)
そこまで思い出すと僕はいつの間にか服に隠すのをやめてタケさんが手に持っていたアルバムをひったくった。



「幼稚園生の時の話ですからそういうこともありますよ。」

「なんだよーもっと見てぇよー。」

「…今日は酢豚と中華風スープ、バンバンジーを作りますね。」

「うぉおおまじかよ!ヒナちゃん早く作ってくれ!」



夕飯の話を出したことでタケさんの意識は完全にアルバムから離れた。(なんて扱いやすい人だ)
僕はにっこりと微笑むとタケさんを連れて自室から出る。



「この様子だとあれは見られてないみたいですね…。」

「あー?ヒナちゃんなんか言ったー?」

「いいえ、言ってませんよ。」



僕が幼稚園の時のアルバムをじっくりと見られたくなかった理由はお遊戯会の記念写真にあった。
お遊戯会の写真の真ん中に写っている桃色のドレスを着た子、それが僕だったからだ。(お姫様の役を巡って女の子達が喧嘩したから僕がやることになったんだ)
タケさんには絶対に見せたくない。(爆笑されるに決まってる)
いつ見付かるかわからない不安を抱えながらも僕はキッチンへと入って行った。





END

- 8 -


[*前] | [次#]
「#甘甘」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -