(サクラミツツキさんへの捧げ物/5年後沖神/ショート神楽)





にやにやと何もかも分かったようなふりをする、その仕草が心底憎らしいと思った。
そんな感情は表に出ていたのか、目の前の男はさらに呆れたように楽しそうに、笑う。


「そう警戒すんじゃねェや。今更知らねぇ仲じゃねぃだろィ」
「……その誤解を招く言い方、反吐が出る」


へらへらと笑みを浮かべながら近付く男、沖田総悟を睨みながら、神楽は武器である傘を持つ手に力を込めた。
触れるほどの距離に近付いた沖田がふいに髪に手を伸ばす。


「髪、ばっさりいっちまって、失恋でもしたのかィ?ザマァねぇな」
「馬鹿なこと言わないで、そんなわけないでしょ」
「………あぁ、そうか」
「…………?」
「そういや、ショートヘアだっけ」


旦那の好きな、あのアナウンサー。
そう言葉を区切るように笑う沖田をぎりりと睨みつけると、神楽は手を払い距離をとる。
神楽のそんな反応に気にした素ぶりも見せずに、沖田は払われた己の腕をさする。


「健気だねィ。せめて旦那の好みでいようってか」
「………い」
「そうやって待ってるなんて、らしくなさすぎて鳥肌もんでさァ」
「……るさい」
「もう旦那は帰ってこねーかもしれねぇってのに」
「……うるさい!!!」


叫ぶように声をあげた神楽は間合いを詰め沖田を見上げる。
眼孔が燃えるように熱い。今自分を突き動かしている感情が何なのか分からない。
言えるのは多分、ただ一つ。


「…お前のことなんか、大っ嫌いアル」
「……奇遇だな、俺もでさァ」


貼りついた笑みを零しながら、殺気だった声で沖田は呟いた。








(泣けない子供)








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