(早荼さんへの捧げ物/ホスト金土)





ほんの少し現実味があれば、この曖昧な関係から抜け出せるのだろうか。
そんな己の思考を笑うように金時は息を吐き出した。
抜け出す口実を求めてはそれに縋る勇気もないまま現実逃避を繰り返している。


「…なに笑ってやがる」


目敏くこちらの気配を感じ取った土方がこちらを睨みつける。が、そこにはいつもの威厳は存在していない。
先程の快感の余韻を残すその瞳に金時は今度こそ笑みを浮かべた。


「いや、かわいいなーって思って」

「気色悪ィこと言うな。俺は客じゃねェ」

「…つれねーなァ」


本心なのに、と呟きながら肌をなぞれば、土方が上がりそうになる声を殺す気配がした。
その反応に笑みを深めると、悔しそうに腹立たしそうに土方がこちらを睨みつける。
そうしてあがりそうになる抗議の声を遮るように、金時は土方の口を掌で塞いだ。
本当に嫌ならやめてしまえばいい。どうせ、後腐れもない関係なのだ。
続けたところで土方との間で残るものなど何もない。
そんな己の思考に自嘲気味に笑う。
言い訳を並べながら手離せないのは一体どちらなのか。


「……土方」


吐きだすように名を呼べば、そこに含まれる切実な響きに、土方が一瞬驚いたように目を見開く。
その相貌を遮るように、金時は押さえつけた己の手の甲に唇を寄せた。



(まだ恋にすらならない)








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