(銀妙)


毎度毎度、よくもまぁこんなに傷をこさえてくるものだ。
そんな感想を胸に抱きつつ、妙は銀時の後ろに座り込む。
上半身だけ衣服を脱いだ銀時の身体にはあちこちと青痣や刀傷ができていた。
かろうじて止血は行っていたのか、出血量はたいしたことない。が、それでもところどころ血が滲んでいる。
まったくいい年した大人だというのに、やってることはわんぱく小僧のそれである。


「お前、今溜息ついただろ」


わずかに後ろを振り向いた銀時が口を尖らせる。
文句を言いたげなその態度を無視して、消毒液を染み込ませた綿を傷口に押し当てた。
途端にあがる情けない悲鳴。
その悲鳴に、少しだけ溜飲が下がる。


「ちょ、消毒にかこつけて傷口抉るつもりかテメェ!」

「安静にするためにも、そのまま傷口が開いちゃえばいいんだわ」

「オイイイイなんかもうそれ治療じゃなくね?本末転倒じゃね?」

「情けない悲鳴あげて。それでも武士ですか」

「あだだだだ、武士でも勇者でも痛いもんは痛いから!」


血の滲んだ傷口全てを消毒して、薄手の布を押し当てる。
そのまま包帯を手に取れば、気配を感じ取った銀時が両腕をわずかにあげた。


「いつまでもヤンチャしてないでそろそろ落ち着いたらどうですか?傷の治りだって、もう早くはないんですから」

「それは何か?年寄りって言いてーのか?ふざけんな、俺はまだ二十代ですぅ」

「年齢を主張し出したら、もう若くはない証拠よ」

「んだとコラ」


首だけこちらに向けて、銀時はこちらを凄む。
それに溜息で返事をして、包帯の端をくくりつけた。
とりあえずの処置はこれで十分だろう。
だんだん慣れてしまった自分に喜ぶべきなのか、嘆くべきなのか。


「まぁでも及第点ってところかしら」

「…はぁ?」

「新ちゃんと神楽ちゃんを置いていかなかったことは評価してあげます」


成長しましたね、とにっこり微笑むお妙に、銀時が口を噤むとバツが悪そうに視線を逸らした。


「…そりゃ、銀さんはジャンプの主人公だからね。今に卍解とかできるようになるから」

「非現実的な夢も結構ですけど、明日からしっかり仕事してくださいね。この治療費もきっちり請求しますから」

「金とるのかよ!」

「当たり前じゃない」


喚く銀時をスルーして身体に巻いた包帯をきゅっと結ぶ。
そうしてお妙は目を細めて笑ったのだった。


(合格ライン)


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