(銀土)


寒さで無意識のうちに身体を強ばらせる。
薄い布団を引っ張りながらゆっくりと覚醒する意識に目を開ければ、真っ白な毛玉が目に入った。
ふよふよと漂う毛玉のような物質を寝惚けた思考で見つめる。
少しずつクリアになっていく思考と共に、呑気ないびきが鼓膜を揺すった。
そうしてその毛玉の正体が男の特徴的な天パであることに気付く。
そういえば、昨日は久しぶりの非番で、なんやかんやこの男、銀時と落ち合ったのだ。
昨夜の記憶を蘇らせていると、ううう、と小さな呻き声をあげながら、銀時の身体が縮こまった。
起きたのか、と顔を覗きこんでみたが、相変わらず間抜けな顔を晒して静かな寝息を立てていた。
その寝息に合わせて、くるんくるんと散らばった髪がふよふよと動いている。


「………。」


枕に横顔を埋めて眠っている銀時に、土方はなんとなしに手を伸ばす。
伸ばした先にくしゃりと柔らかい感触。
クセが強い割に意外と触り心地のいい髪だと思う。全くもって気に食わないけれど。
あちこちに散らばる髪を指に絡める土方をよそに、銀時は変わらず寝息を立てている。
気の抜ける、アホ面だ。
そんなことを思いつつ、ふ、と鼻で小さく笑う。
そして、そのまま絡めていた髪を、思い切り引っ張った。


「ーーーっ!!あだだだだっ痛っ痛ーっつの!!」

「オラ、朝だぞ起きろや」

「そんな乱暴な起こし方あるかァァ!せめて段階踏めよ!優しく声かけるとかさァ!」

「馬鹿なこと言ってねーでさっさと起きろっつの。腹減ってんだよ、俺は」

「…起こしてすぐ朝飯要求するってどんだけ横暴?亭主関白気取りですかコノヤロー」


ぶつぶつ文句を言いながらも銀時は布団から這い出て、居間へと消えていく。
それを眺めてから土方は欠伸を1つついて、ぐぐぐと伸びをする。
久しぶりにちゃんと睡眠が取れた気がする。
それが銀時のお陰だなんて死んでも考えたくはないが。


「土方ァ、納豆食う?賞味期限切れてっけど」

「…賞味期限切れって…んなもん食わせようとすんな」

「別にいいじゃん。もったいねーし。つーか納豆なんざ、もともと腐ってるもんだし」

「そういう問題じゃねぇだろ」


呆れのため息をつきながら、ソファへと腰掛ける。
土方の反論に口を尖らせながら銀時は机にお椀を並べる。
なんてことはない朝の光景。
でも悪くはない、なんて。


「…俺も末期だな」

「はぁ?何が?大丈夫だって。賞味期限切れつったって1日だし」


見当違いな答えを返す銀時に溜息をついて、土方は味噌汁に手を伸ばした。


(モーニングコール)


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