(坂銀/数国/同居設定)



「あ〜〜〜〜終わった」

長い溜息と共に言葉を吐き出して、銀八はPCの電源を落とした。
自宅に帰るやいなやPCとにらめっこをして3時間半。
自分にしては集中力が持ったほうだと褒めてやりたい。
そんな自画自賛を脳内に浮かべて、机の上に置かれた煙草を手に取る。
本当は自宅に仕事など持ち込みたくないのだが、年度が変わるこの時期はやたらと雑用ばかりが増えてしまうのだから致し方ない。

成り行きのまま教職という仕事について、いつの間にやら5年の月日が過ぎた。
職にあぶれることはない安定の公務員という地位はいいが、教師という仕事は仕事量の割に安月給なのが痛い所だ。
しかしこの銀魂高校はまだ楽な方かもしれない。
偏差値の低いこの高校の生徒は良くも悪くも素直な馬鹿ばかりで扱いやすい。
お受験戦争なんていうめんどくさいものに巻き込まれなくて済むのだから、自分にはこの学校がちょうどいいのだ。


「…今日は風強ェな」


ガタガタと音を立てる窓を眺めてぽつりと呟く。
そういえば今日は夜から寒さがぶり返すと結野アナが言っていた気がする。
外気温から遮断された室内では実感があまり沸かない。
窓越しに聞こえる風の音に耳を傾けて目を閉じる。
集中力が一気に切れたせいか、身体は睡眠を求めている。
堪えきれず欠伸を零して、こたつに更に潜り込んだ。
こたつという文化を生み出した先人は偉大だ。しみじみそう思う。
眼鏡をとっ払ってこたつに顎を乗せる。
睡魔に誘われるがまま意識を手放そうとした、その時。


「あ〜今日はまっこと冷え込むぜよ!」


背後に聞こえたうるさい笑い声と共に、痛いくらいの冷気が背中に突き刺さる。
寒さのせいで嫌が応にも目が覚めてしまった。
恨みがましげに後ろを振り返れば、辰馬がのんきな顔で笑っている。


「お前、帰ってきたらさっさとドア閉めろや!寒ィだろーが!」

「なんじゃあ、さっきまでぬくぬくしちょったおんしに文句言われる筋合いはないぜよ」


寒い寒いと手のひらを擦りながら、辰馬がコートをハンガーをかけに隣の部屋へと消えていく。
たった一度開いただけだというのに、外の空気が入ったせいで一気に身体が冷え込んだ気がする。
こたつで身体があったまっていたから、その反動もあるのかもしれない。
そんなことを考えながら、こたつの布団をたぐり寄せて身体を縮こませる。
ふいに背中に気配を感じた。
しかし、その気配に振り返るよりも早く、辰馬が銀時の背後に回り込み、腕を銀時の腹にまわす。


「…なにしてんだテメ」

「だって寒いぜよ」


拗ねたような口調でそう答えた辰馬が後ろから抱きついてくる。
いつもなら鬱陶しいと跳ね除けるところだが、今日はなんとなくそんな気が起きなかった。
仕方ない。なんてったって寒いのだから。


「外、雪降ってたぜよ雪。あの勢いじゃ積もるんじゃないかの」

「マジでか。あー明日学校行くのたりィ」


明日の道路状態を危惧して溜息を1つ。
雪が積もるのならベスパでの通勤は厳しいかもしれない。
そんな僅かな心配を抱えながら、後ろの人間湯たんぽに身体を預けた。


(コールドダウン)


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