銀時×お妙




きっと、何度も繰り返すのだろう。
その光景に慣れてしまうには、それなりの覚悟が必要だった。
覚悟?浮かんだ思考を打ち消すように妙はこっそり笑う。
そんな気配を感じ取ったのか、銀時は少しだけこちらを振り返り、口を尖らせた。
なに笑ってんだよ、と不満げな銀時の背中にガーゼを押し当てる。ガーゼに染み込ませた薬品が染みるのか、銀時は情けない悲鳴をあげる。なんとなく溜飲が下がる気がした。
そして気づく。あぁ、私、怒ってるのね。


「ちょ、お前、もうちょい優しくしろよ。こっちは怪我人だぞ」

「怪我人の自覚があるなら、おとなしくしててくださいな。だいたいいい大人が傷だらけって恥ずかしくないんですか」

「バッカおめー、男はいつまでも少年なんですー」

「銀さんに"大人"を求めた私が馬鹿だったわ」


心底呆れた声で呟けば、銀時は楽しそうに笑う。まるで子供だ、と妙は目を細め銀時の背中をそっと撫でた。
子供に似つかわしくない傷だらけの背中。
新しい傷も古い傷も入り乱れた線を描くそれは作り物めいて見えた。
否、作り物であって欲しいと願ってしまった。
なにを馬鹿なことを、と笑うには、この光景にいつまでも慣れない自分がいる。きっと慣れたくなどないのかもしれない。
己が押し当てたガーゼをそっとなぞってみる。ほんの少し、薬品の匂いが増した気がした。
それが何故か、哀しい。
"背中の傷は武士の恥だわ"
そんな憎まれ口を飲み込んで、妙は傷だらけの背中にそっと唇を寄せた。


背中(確認)







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