03
「三キロメートル区間の路線破壊、再建工事中のビル三棟、工事用重機、エトセトラ…。幸い身内の怪我人二名で済みましたが、奥村先生…管理責任者としたあなたがついていながら…」

裁判所のような場所で、雪男が被告人の如く立ち尽くす。雪男は右腕を負傷したらしく、腕を吊っている。全ての責任は自分にあることを謝罪と共に告げると燐が納得いかないとばかりに違う!と叫んだ。しかし、兄さんは黙ってて!という怒声によって燐の言葉はかき消される。

「フェレス卿、彼らの処分は」
「そうですねえ。この結果では…」

メフィスト・フェレス、正十字騎士團日本支部長であり名誉騎士の称号を持つ祓魔師だ。奥村兄弟にとって敵なのか味方なのか、分かりかねる行動をするため出来れば関わりたくはない。胡散臭さや狂言回しも苦手になるには十分すぎる条件だった。

「処分を言い渡す」

雪男は戒告処分で燐と杜山さんは五日間の謹慎処分となり、始末書を明日までに提出とのこと。処分の内容を聞く間、メフィストが怪しく笑った事は忘れない。

「奥村先生、貴方のキャリアに汚点を残す結果、私も残念です」

メフィストが踵を返して法廷から出て行くのを確認し、シュラと私も法廷を後にした。


+


ごめんな、俺のせいで…と杜山さんに謝る燐の後ろにシュラがこっそり回り、燐に技を決めた。平均より数倍上回る胸の大きさもあってか首を絞める強度は高いようだ。

「てんめぇ何だあのザマはぁ!?良い加減ちゃんと出来ねぇのか!!」
「ちょっとシュラさんそれ以上は燐が…」
「滑稽だな。幽霊電車ごときであの騒ぎとは」

がっかりさせられたぞ。と付け加えるリュウさんは部下二人を引き連れて何処からともなく現れ、そしてファンシーなケースを取り出し、キャンディを口に入れたと思えば凄まじい音を立てながら噛み砕いた。ギャップが凄すぎて何とも言えない。ここは突っ込むべきなのかそれとも触れない方が良いのだろうか。部下二人は慣れているんだろう、特に気にも留めないでいる。

「テメーは船にいた…」
「おー、紹介がまだだったな」

こいつはリュウ・セイリュウ、正十字騎士団台湾支部、上一級祓魔師だ。とシュラの紹介が終わったと同時に部屋の奥から悲鳴が響き渡った。

「何事だ」
「ベッドに寝かせていたのですが、起きたら急に…」

シュラの問いに看護師の女性の声が返ってきた。医師の頭の上に乗り暴れる少年は先ほど燐が見つけてきたらしい。少年の動きが一瞬止まり、何かと思えばこちらに飛んできた。私は身の危険を感じ取り反射的に燐の後ろに隠れると、少年は先ほどの医師と同様、燐の上に乗り暴れ始めた。
近くにいては危ないと思い、シュラや杜山さんの元へ避難する。

「おいみょうじ俺を盾にすんじゃねえ!いってぇ!痛え!!しかもお前逃げたな!」
「あははごめんねえ」
「悪いと思ってねえだろ!もっと申し訳なさそうに言えねえのか!っ痛い痛い離せぇ!!」

挙げ句の果てには燐の尻尾を勢いよく噛み出す始末。燐の悲痛な叫びが聞こえたと思ったら少年は近くのはしごを使い、天井へと逃走した。
燐は彼を追いかけるもののすばしっこいためうまく捕まえられない。これは長丁場になるぞ…と私の睡眠時間に別れを告げようとした瞬間、リュウさんが武器である赤い棒で少年の行く手を遮り、彼は床に落下した。それと同時にリュウさんの部下が刺股で少年を押さえつける。

「おい、子供相手にやりすぎじゃ…」
「見ろ」
「…尻尾?」

焦りながら近寄る燐に対してリュウさんは冷静に少年の洋服を捲し上げた。少年のお尻には兎のような尻尾が生えていた。

「祓魔師が悪魔を助けてどうする!馬鹿か。檻もってこい!」

少年が悪魔だと判明してから静かになった部屋にリュウさんの怒声が響き渡った。


+


悪魔の少年は取り押さえられた後、檻に入れられメフィストの元へと運ばれた。燐と雪男も彼に呼ばれたらしく、理事長室へと向かって行った。きっと明日もリュウさんと任務を共にするのだろうと思うとお小言を言われないためにも早めに寝床についておきたいので私は帰宅しようとしたのだが杜山さんに呼び止められてしまったので彼女と一緒に燐達を待つ。なんでも、見せたいものがあるとか。
それはそうと私の睡眠時間はいずこに。
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