「おはようございます一樹さん」
「ふああ…おはようさん」
「ふふ、寝癖ついちゃってますよ」
「なっ…、笑うなよ」
「すみません、つい」



一樹さんと結婚して早数ヶ月。彼と一緒に暮らすことで、以前よりもずっと長く同じ時間を共有していられるようになった。



「朝ご飯できてますよ」
「サンキュー。えーっとなになに…、今日はトーストにベーコンエッグ、ソーセージにサラダか。旨そうだな」



毎朝一樹さんより少し早めに起き、一樹さんのために朝ご飯を作る。たったこれだけの事なのに私はすごく楽しい。料理は苦手で申し訳ないけれど、一樹さんのために何か出来るというのが嬉しいんだと思う。



「相変わらず月子の料理は不思議な味だな」
「……」
「あ、いや、まずい訳じゃない!なんっつーか独特というか面白いというか…」
「それ全然フォローになってません」
「はは、だよな。でも俺はそんな味を美味しいと感じちまうんだよ」
「…え?」
「この料理には月子の愛が篭ってるからな。そうだろ?」
「そ、そんなの知りません!」
「お前、照れてるだろ」
「もうっ、食べ終わったんなら早く着替えてきて下さい!」
「はいはい、わかりましたよっと。ごちそーさん」



一樹さんは変わってない。なにかと私をからかってくる。でもそんな一樹さんに安心する。心があったかくなる。



一樹さんは星詠みの力というものを持っている。実際にその力を持っていない私にはよく分からないんだけど、少し先の未来が見えるらしい。一樹さんはその力で未来を見据えることで自分を犠牲にし、他人に幸せを与えてきた。



「おーい月子、皿が洗い終わったらネクタイ結んでくれ」
「はい、わかりました」



その事実を知った時、私は哀しくなった。どうして自分を犠牲にするんですか。どうして貴方はもっと幸せを望まないんですか。…どうして私を頼ってくれないんですか、と。



「ん、頼む」



当時高校生だった私は何もすることが出来なかった。否、何をすればいいのか分からなかった。でも、今は。私が一樹さんの側にいることで彼の役に立てている。彼を幸せに出来ている。


「…月子、落ち着け。ゆっくりでいいから」
「は、はい」
「──ふっ」
「一樹さん?」
「……なんっつーかさ、」



親父とお袋を思い出したよ


「あ…」
「俺もあの二人みたいに笑えてんだろうな」



そういえば、生徒会室で二人きりの時。一樹さんが私のスカーフを直してくれた。私も、一樹さんのネクタイを直したんだっけ。



その時に彼は両親について語ってくれた。お父さんとお母さんについて話している時の一樹さんはとても幸せそうな表情で、とても嬉しそうだった。




「かずき、さん」
「ありがとう月子、お前のおかげだよ」
「えっ…?」
「俺は今、ものすごく幸せなんだ。お前が側にいてくれる、ただそれだけで俺は嬉しくなる。幸せを感じられる」
「っ、一樹さん…」
「俺も、待つよ。お前がネクタイを結んでくれるまで。ずっと、ずーっと待ち続けてやるからな!」



一樹さんはやっぱり変わってない。いつ、どんな時でも私の欲しい言葉をくれる。



私は一樹さんと一緒にいられて幸せで、一樹さんもそう思ってくれている。あわよくば、いつまでもこんな幸せな時間が続きますように。



ネクタイ。




100430
相思相愛さまへ提出。

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