◇前書き◇
DC後。セフィティ前提のヴィンティです。微塵もラブラブしてませんし暗いので注意!


―――



―そういえば、前にもあった。


2人きり、そんな状況。


今はそんな曖昧な昔話をするような気分じゃなくて、口を結んだ。
「忘れてしまうほうが幸いだ」
見つめる深紅の瞳は焦りを隠している。陽炎の様に苛立ちがその奥底に揺らめいている気がして、怖くなった。

正気のない唇…、ふと見たそれにあの日の影が重なった。

紡がれる言葉は、低く、紳士的でもあり、威圧的。
いつもと変わらないようではあるけれど、そこに優しさは感じられない。


―怒ってる。

先程からティファは居心地が悪くて仕方がない。
何故?
この男…ヴィンセントの怒りをかうような真似を?
心当たりも、身に覚えもない。

「いつまで縛られているつもりだ?」


その言葉、嫌い


薄暗い照明に、どこから迷い込んできたのか小さな蛾が飛んでいる。その羽ばたく姿が巨大な影絵になり、2人の存在に踊る。

「…」

もう、私には答える気力もない。

縛られたままに。
彼の手で。


―数日前

何がきっかけだったか、ヴィンセントが訪ねてきた。
オメガとの戦いでどこか変わったヴィンセントは仲間とも連絡をとるようになったらしい。この間、シエラさんとの電話での会話で『何だか雰囲気が優しくなった』と、ヴィンセントの話題が出たのには驚いた。シドも感心していたらしい。
ユフィも『どっか吹っ切れたみたい』などと言っていた。
あの戦い以来ウチに住むことになったシェルクは深くを知っているようだけれど、立ち入った事を聞くつもりは元々ない。

大体の想像はつく…

一度だけ、その幻を見た。


ルクレツィア…
そう切なく呼ばれた、綺麗な人。



「ティファ、私と共にニブルヘイムへ行こう」
夕食の後、久しぶりに3人での酒席。ヴィンセントの突然の誘いに心底驚いた。
「…え?」
その場所へは、きっともう行くことはないと思っていた。嘘で塗り固められた…それでも私の故郷。
お店の事や家族の事もあるが、あまりの突然の申し出に返事を戸惑っているとき。その申し出に賛成したのは、意外にもクラウドだった。
「マリン達や店のことは心配するな」

休暇だというなら、もっと別な場所がいいな。そんな訳もないだろうし、冗談は心の中におさめる。
何か情報でも必要なのだろうか?そう安易に考えついてしまったのだ。

「あまり長くはいれないけど…私が力になれるなら」
神羅とゆう組織が崩壊したとゆうのに、そこに住む人達は変わらないでいた。
神羅からもらった『役』を長い間ずっと演じ続けていくうちに、本当の自分が分からなくなってしまったのか。ただ、やはり彼らにも神羅とゆう組織はプレッシャーだったらしく、自由になった今はどこか穏やかな雰囲気があった。

宿をとり、余分な荷物を置くとすぐに私達は神羅屋敷へと向かう。


あまりにも根深い、因縁。
ここで全てが始まっては、全てが終わっていった。

もう何もない事を祈りながら、グローブにきつく手を詰めた。
正面玄関である大扉を開けると、独特のカビくさいような埃の匂いがした。床を見ると床板が割れあちこちから雑草が生えている。壁にも苔や蔦が蔓延りつつある。

なんだか一気に老朽化したみたい、ティファはどこかノスタルジックな気分になった。
ギシギシと床板が軋む。その音が何だか気恥ずかしくなってくる。『そんなに重くないわよ!』と悪態をつく。
「なんだか…ちょっと懐かしいな。こんなにボロボロだったかしら?」
「…あれから放置されているようだな」
ヴィンセントの言う『あれ』とはロッソとの戦いを指すが、当然ティファには通じない。ティファは3年前だと解釈したようだった。
「そっか…」
しかし随分と様変わりはした。部屋を覗くと、中身は分からないが木箱などが積まれており、殆どの物は撤去されてしまったらしい。それでも残った家具には白い布がかかっていた。
「あ、ピアノ無くなってる…」
「…」
残念そうにするティファを、ヴィンセントはどこか微笑ましく思った。
地下へ続く螺旋階段。
円柱状に積まれた石のブロックの壁に、木の板が階段状に建設されているだけとゆう、何とも不安な造り。その様な足場であるにも関わらず手すりなどは一切無く、むき出しの石の壁に手を添える。
ギシギシと軋む板、地下から吹き上げる冷たい風に指先のザラついた感覚が曖昧なものになっていった。
相変わらず冷たい空気。
ニブル山特有のなめらかな岩肌は鍾乳洞の様だ。外の陽気を忘れそうな程、ここは寒かった。

「…!」
ティファは驚いた。以前には無かったものだらけだ。
「ヴィンセント、ここ…」
「ああ、また最近手が入ったようだ。おそらく以前からあった施設の様だが…」
知らないドアに、知らない部屋…。それはどれも近代的であり、増築された時のような構造的な違和感を感じた。
「…」
様々な実験機材などがそのまま放置されており、それらはまだ人の存在を感じさせていた。

なんだか不思議な所…、ティファはそう思った。ずっと放置されていたはずなのに、そう古くはない機材。
ヴィンセントによるとニブルヘイムより少し離れた所にまた別の入り口があるらしい。実は、ずっと知らない所で最近まで何かしらの研究が行われていたのかもしれない。
ティファがニブルヘイムを離れたのはもう8年も前になる。
おそらく、それよりもずっと以前からあった施設を改築なりしたのだろう。あの忌まわしい惨事をキッカケに。

『本当に…利用するならどこまでも、って感じね』
冷やかな皮肉をため息にして、ティファは埃被った机の一辺を指先で撫でた。

「ッ!!」
埃の下から浮かび上がる赤い染みがまた、ティファの心に恐怖を刻んだ。



「ここは…ジェノバサンプルの本拠地だ」
「…え?」
蛍光灯の青白い光にヴィンセントの赤い影がやけに冷たく見える。精気のない唇が微かに歪んでいた。
「セフィロスコピーと呼ばれた、ジェノバ細胞を投与された人々は…多くはここでそうされたらしい」


衝撃的な事実に、ティファは目の前が暗くなっていくのを感じた。


人目につかない場所で、神羅の息のかかった土地で、村人は皆が神羅の人間でいて。
これほどに都合良い場所は他にあるまい。人道を外した行いをする場所には。

「なんだか…もう…」
それでも私の故郷だなんて。
ティファは逃げ出したい気持ちを抑えて、震える肩を自身で抱いた。


「お前には酷だと分かってはいた、だが…」
「うぅん、いいの。私は…それでも…、大丈夫だから…」
うまく続かない言葉に、取り繕う余裕もない。何かを言いかけたヴィンセントを遮って、ティファはニコリと微笑んでみせた。

「じゃあ…私は何をしたらいい?」


上手く笑えていたかは、分からない。
様々なレポートを読むと、所々に名前が残っている。
ルクレツィア・クレシェント博士…、とても優秀な人だったらしい。正確には分からないがセフィロスの年齢などを考えるともう30年は経過しているはずだ。そんな彼女の実験記録などが比較的新しいレポートにも記載されていた。

ルクレツィア・クレシェント
優秀な学者で、ヴィンセントの想い人で、セフィロスの母。

彼女の事はよく知らない、どんなだったんだろう?ティファは思いを馳せた。



―それから随分な時間が過ぎた。
欲しているジェノバに関する情報は特に目ぼしいものもなく、今日の収穫はゼロだ。
『やっぱり…』
少しは予想していた事だ。あんな最高機密を放置している訳がない。

しかし、神羅内でジェノバの存在を本当の意味で知っていたのは数える程だったようだ。ジェノバが『空からきた災厄』とゆうこの星の外から来た生命体であって、そして意思を持っていた事をこれらのレポートを遺した人々は知らなかったらしい。ただその情報を知ったとしても、彼らにはやはり只のモンスターだったかもしれない。
細胞ひとつひとつに意思を持ち、母体に集結しようとする習性。それは宝条博士が発見したらしい。それは研究者でなくとも異質なのは分かる。

―宝条博士はいつから狂っていたのだろうか?

モンスターの特化した身体能力を人間に求めたのは、
神羅の軍事力の強化のため?
医療の発展のため?
それとも、人間をデザインするとゆう、神にならんとする傲り?


嫌な想像をして、ティファは考えを振り払うように頭を振る。
「…間違ってるわ」
もし、単なる興味でモンスターと人間を掛け合わせていたのならば…もう貴方を許す余地もない。

そして、モンスターとしても特別なジェノバを使って、セフィロスを作ったのだ。



どこにも記録はないけれど、知っている。


セフィロスは、宝条博士とクレシェント博士との子供だということ。
『母の名前はジェノバ、父の名前は―…』
ガスト、そう言うつもりだったと思う。クラウドに聞いた、セフィロスとの会話を思い出す。

ガスト博士こそが、ジェノバプロジェクトの要員だった事を私は忘れない。
彼さえいなければ、こんな悲劇は起きなかった。だけど、エアリスにも会えかなった。だから私は唇を噛む。


宝条博士はクレシェント博士に宿った命を、ガスト博士への嫉妬に捧げたのだ。

もうその時点で皆が分かっていた。エアリスの母イファルナの助言でジェノバは古代種ではないと…全てを知りながら。


そしてセフィロスは、何も知らされずにいたままで。

『…可哀想』
思わず、そう呟いた。
ずっとレポートなどの文章を読んでいた所為で目が疲れてしまった。目を閉じると、じわり、と熱を持った涙が滲んだ。

『少し休もうかな…』
一体今は何時だろうか?
陽の当たらない地下に居ると時間の感覚が麻痺してくる。今まで集中していた事もあり、すっかりティファは時間を忘れてしまっていた。
辺りを見回すと、同じ部屋にいたはずのヴィンセントの姿が見当たらない。
いつの間に居なくなったのだろう?ティファは少し心細くなるも、休憩をするべく立ち上がった。

この地下にも簡易寝所があったが、今は外の空気が恋しかった。ティファは地下室を抜け出し、神羅屋敷へと戻って行った。



「あ…」
地下から伸びる階段を上がり二階へと出ると、辺りはもう真っ暗だった。
昼間の内に用意しておいたランプに火を灯し、辺りの様子を窺う。
「…」
モンスターの気配はないが用心するにこした事はない。しかし驚いた、もうこんなに日が落ちていたとは。
ティファはランプを手に、奥のベッドルームへと向かう。まだベッドが残っているといいけど…、そんな事を考えながら。
幸いにもベッドルームは昔そのままだった。変わらず3つのセミダブルベッドが並んでおり、それらには丁寧にも布が被せられている。
その布を取るとやはり埃が舞ったが、中の寝具は綺麗なものだ。
ティファは少し躊躇いながら横になる。少しカビ臭いが不思議と不快ではなかった。どこか懐かしくさえ思うのは、幼い頃に同じようにしたからか。陽のよく当たる窓際のベッドに同じように寝転び、暖かな陽射しを浴びながら昼寝をした。
そんな幼い頃の記憶をゆっくりと思い出しながら、次第に眠りにおちていった。




―…熱情に侵された、あれは紅い月の夜だった。

決戦前の夜の事。
その日に見た夢に、胸が焦げる。


『あぁ…そうだ』
いつの間にか目が覚めていて、泣いていた。

短い夢を見ていた。

どんな夢であったかは思い出せないが、この空虚な気持ちから決して楽しい夢ではなかったようだ。目尻から流れる熱い涙が、熱を失って冷たく耳を濡らす。


こうやって目覚めるのは、初めてではなかった事を思い出した。


「………」


セフィロス。
紅い月に照らされて、不吉な笑いを浮かべる口元に誘われた。




「目覚めたか」

「ッ!!」
思考を中断させるように突然、闇に響いた声にティファは思わず身体を強張らせた。
ベッドから跳ね起きると身を丸め、警戒しながら辺りを窺う。

ギシギシと床板を踏みしめる音が近づいてくると、ティファは警戒体勢を解いた。ヴィンセントだ。
ティファの予想通りに、闇から深紅のマントを翻すヴィンセントが歩み寄ってきた。
「休めたか?」
「ぇ、ええ。ごめんなさい、勝手にいなくなって…」
「構わない。退屈で途方もない作業だからな…疲れただろう?」
そう言いながら、ヴィンセントはベッドの傍らにあるサイドボードの上に置いたランプに火を灯した。
柔らかな光がお互いの顔をぼんやりと照らす。
「そうね…、今のところ目ぼしい情報は無いわ」
「そうか」
ヴィンセントはさして気にした様子もなく淡々としていた。まるで初めから期待していないか、そんな風に。ティファは少し違和感を感じるものの、特に気に留めなかった。

ヴィンセントは少しの間を置いて喋り出した。
「今日…此処に君を誘ったのは私の傲慢だ」
「え…?」
ティファはヴィンセントの言葉の意味が分からずに思わず聞き返した。
「傲慢って…?」
「…」
ヴィンセントは目を伏せて、少し考え込む様に顎をひいた。
長い睫毛に影が落ちている。ティファはその表情の憂いに気付き、少し気まずく思った。

私の事なら構わないで、手伝える事なら何でもするわ。そう言いかけたティファより早く、ヴィンセントはティファの向かいのベッドに座った。
「私は…」
ヴィンセントの躊躇いが伝わる。伝えにくい事を言うような、覚悟を決めかねている。その表情にふと、ティファは冷静になっていった。

「セフィロスの事…ね?」


ヴィンセントのハッとした表情に、ティファはどこか呆れた気持ちを覚えた。
もう何度も同じことを言い聞かされる様な、うんざりした気持ち。


もう、分かっているから放っておいてよ。
貴方まで言うつもりなの?
良いのよ、私はこのままでいたいの。

ティファの冷静な瞳に、ヴィンセントは一瞬鳥肌がたつような威圧感を覚えた。
「…ティファ」


「ヴィンセント…何故?」
貴方には関係のない事だ。
私はこのままで良い、貴方が干渉する理由は無い。
単なる気まぐれや、綺麗事をふりかざす気ならば、止めて。


ティファの醒めた瞳にヴィンセントは少しの狂気を感じた。


―ああ、きっと
私もこんな瞳をしていたのだ。

「ティファ…」

「君を見ていられないんだ」

ヴィンセントは憂いの目を伏せる。
「…」
ティファは沈黙し、震えるように動くヴィンセントの青ざめた唇を見守る。
綺麗な顔、そう思うくらいに上の空で。


「セフィロスの事は忘れるべきだ」

忘れる?忘れられる訳ない。

「君には未来がある、いつまでも縛られていてはいけない」

縛られてなんかない。一番欲しかった未来はもう叶わない。


ヴィンセントの言葉をどこか白々しく思いながら、心の中で反論を繰り返す。



「愛しているの」

ティファの言葉に、ヴィンセントは反射的に顔をあげた。
「私は今もセフィロスを愛しているの」
熱を含んだ言葉。ティファの表情は恋する女のそれだ。涙で潤う瞳は恋人の面影を追っている。


ティファはセフィロスに恋をしていたのだ。
いつからかは分からない、ティファは仇であるセフィロスを許し、そして愛するまでになっていた。
それをヴィンセントが知ったのは、決戦前夜の事だった。

紅い月の昇った夜。
このニブルヘイムの、この屋敷の、そしてこの部屋で2人は逢瀬していた。セフィロスの長い銀髪がティファに絡む様は、網にかかり足掻く獲物と蜘蛛を思わせた。
しかし、ティファは一切の拒絶をせず、むしろ受け入れていた。もどかしげに、貪欲に求めあう姿は『恋人同士』のそれに他ならなかった。恍惚としたティファの表情は普段の姿からは全く想像出来ないほどに強烈に美しい。思わず見惚れてしまったすぐ後に我にかえり、2人を残し、その場を去った。


翌日、何事もなかったように合流した。ティファはいつも通りで、昨晩目撃したものは幻かと思い始めていた。
しかし、幻ではなかった。それが分かったのは、最後のセフィロスとの戦いだった。

ティファは本当にギリギリまで迷っていた。凶行を止めるつもりで出向いたがしかしセフィロスの意識など何処にもなく、そこにはセフィロスの顔をしたジェノバが在るだけであった。
最後の最後に、崩れゆく肉体に愛するセフィロスを見出したティファは駆け出していた。
セフィロスに抱きとめられ、空中に連れられたティファ。セフィロスは心中するつもりだったのか、己の尖った腕先をティファに突きたてようとしたその瞬間、ティファを抱きしめていた片腕が崩れ、手放した。瞬く間にセフィロスの姿はかき消え、墜落したティファは羽の折れた鳥の様にただ横たわるだけであった。


「ティファ、君は何を待っているんだ?」
セフィロスを愛し続けても、見返りは何もない。
ヴィンセントに憐れみに似た表情を見出したティファは、それが堪らなく腹立たしく思えた。

「貴方だって…同じだった!」

ヴィンセントの表情が鋭い痛みが走ったかの如く曇る。
絶対に叶わない恋をした。愛する人が亡くなっても想い続けていた。未来を拒み、いつまでも思い出に耽る事を望んだ。

「私は忘れたくないの!」

乗り越えるまでに一体何年費やした?それでも、貴方が出来たからって私に出来る?その必要があるの?
どれだけの喪失感か、知っているはず。忘れることなんて出来ない。忘れたくない。だのに記憶は薄れていく、顔も声も、どんな風に笑ったのかさえ曖昧になっていく。これがどれほど怖いことなのかも分かるはず、だから―…!

「今も逢いに行ってるんでしょう?!ルクレツィアさんに!」


ティファがその名を叫んだと同時に、ヴィンセントはティファの両手首を掴み、ベッドに押し倒した。
ベッドのスプリングが耳障りな音をあげて勢いよく軋んだ。
取り乱した所為かティファの息があがる。その乱れた呼吸にあわせて激しく上下する胸。表情はまだ怒りが治まらないといった風に眉をひそめ、紅潮していた。
一方ヴィンセントは驚くほどに涼しい表情をしている。しかし、そのすぐそこには揺らめくような静かな怒りがたたえられていた。
「…」
「…」
お互いに無言で見つめあう。まさかこんな状況になろうとは…しかしヴィンセントは望んでいた事ではある。
ティファの本心を聞き出すこと、これこそがこの旅の目的なのだから。

ティファが観念したかのように、その目に冷静さが戻ってきた。
最初に口を開いたのはヴィンセントの方だった。

「忘れてしまう方が幸いだ」
色彩までもが運命的に、二人はひどく似ていた。青ざめた白い肌が重なり、赤い瞳は悲しみに揺れる。
ヴィンセントは後悔に沈んだ過去を思い出す。絶望し、自ら全てを閉ざした。そしてティファの今の姿は、自身の過去そのものだ。

やがて何らかの救済があるだろうか?自分のように、後付けされた理由で過去を癒せるだろうか?

何度も甦るセフィロスの影はティファに希望を持たせるだろう。最終決戦のあの時、果たされているはずだった心中をやってのけるかも知れない。そしてティファはそれを望んでいる。花のような笑顔で受け入れるのだろう。

ああ、ティファ。

「忘れさせてやる…」
過去の自分を見ているようで耐えられなかった?
未来に前向きになって欲しかった?
全部、彼女の為だとでも?
全て言い訳だ。自分にどこまでも都合のいい言い訳だ。結局は自分の欲望を満たしたかっただけ。
愛情なんて欲望だ、そう毒づくならばこれも愛情だろうか。歪で一方的。そこに何が加われば美しい愛になりえるのだろう。


ティファはセフィロスを忘れない。そして誰も忘れさせてやることは出来ない。時間さえも何も解決することはないだろう。
ヴィンセントには痛い程分かる。その腕に抱いた、悲しいほどに美しい彼女にいつか安らぎが訪れるように。


これは愛情とは呼べない。汚れた欲望だ。

そして、なんて惨めな恋。



-Fin-


―――

◇後書き◇
御免なさい、本当に御免なさい。超御免なさい。ヴィンセントが強○魔にー!!!!キャラのイメージと全く違うし、ヴィンセントに対して悪意もありません事をここで申し上げます。
セフィティ前提のヴィンティでした。執筆に時間があいてしまったので一人称バラバラだしで酷くてすみません。
このティファはとにかくセフィロス好きで、最終決戦後は惰性的に生きてるというか、いつかセフィロスが迎えにきてくれる、とか思ってる。決戦前夜の会瀬、セフィロスがティファを道連れに殺そうとした話も別に書いてたのですが、今回の話に折り込みました。して、何故にヴィンセント?ですが、作中にもあった通りに『似てるな』と。死人に恋したままで、ほの暗い希望を抱いてる…そんな所が。
ヴィンセントはそんな状態のティファに対して複雑な感情を抱かないはずがない。過去の自分そのものだし、気持ちは分かる。今だって完全に立ち直れた訳ではないが、ようやく新しい人生を歩こうとしている。だから余計にティファを放っておけない、過去を見るようで目障りでもある。その辺の複雑さをもう少し突き詰めたかったのですが力量不足。
まぁどうやって説明しても強○すれば全て言い訳よなぁ。どんなに彼女の為だと綺麗事を言ってもトラウマの上塗りでしかないし、白々しい。

この話の結末はどうやっても平行線っぽいです。ティファはセフィロスを待ち続けて幸せ。幸せのかたちは本人が決めるってさー!
あと作中でFFDCディスってゴメン☆これからもやるけど(笑)
ここまで読んで頂き、有難うでした!
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