◇前書き◇
ラブラブです。
―――
「クラウド、こっち向いて」
愛車のメンテナンスをする手を止めてティファの呼びかけに応えると、一瞬の強烈な光に目が眩んだ。
―カシャッ
「!」
残光を振り払うように頭を振り、目頭を押さえる。今のはフラッシュ?
「あ、ゴメン…!今の眩しかったよね?」
目を開くと、構えたままのカメラから申し訳なさそうな表情の顔を覗かせたティファが居た。
「…」
「本当ゴメン!ほら、そんなに不機嫌な顔しないでよ」
「…別にしてない」
「本当?ここ、シワ寄ってる」
そう言って、少しからかう様にティファは自分の眉間を撫でた。
「それより…カメラ?」
クラウドはお返しとばかりにティファからカメラを取り上げると、それを鑑定する様に手に包んだ。
「あ!もう…壊しちゃダメだからね」
少しふくれたティファの注意に頷く。
見覚えのない、少し古い型のカメラだ。デジタルカメラなどではなく、フィルムを必要とするタイプは随分久しぶりに見た気がした。
一体、何処で?その質問は訊くまでもティファが話始めた。
「さっき買ったの。店の買い物の帰りにね」
メインストリートから少し外れた場所に忘れられた様な時計店があり、そこのショーケースの片隅にこのカメラがあったのだと言う。
そのノスタルジックな雰囲気に惹かれて買ってしまった。ティファは少し照れる様に笑った。
衝動買いだとしても、ティファには珍しい事だ。
だが、その手に馴染む感覚をもつカメラは愛着がわくのに時間はかからないだろうと思った。
「ティファ、こっち向いて」
カメラを構えると、ティファは慌てた様に前髪を直したりしだした。
「あ、やだ!撮っちゃダメ!」
―カシャッ
「もう〜!さっき帰って来たばっかりなのに…」
その言葉の意味が分からなかったが、ティファは不機嫌に唇を尖らせた。
―カシャッ、カシャッ
「あ!もう!」
―カシャッ
「撮っちゃダメだってば!」
構わずシャッターを切り続けるクラウドに、ティファはカメラを取り上げるべく掴みかかる。
「きゃ…っ!」
「ぅわ!」
ガシャ――ンッ!!
盛大な音がした。工具箱をぶちまけ、フェンリルのカバーシートにクラウドを押し倒す形になりティファは更に慌てた。
「イテテ…」
「ご、ごめんなさい…!」
慌てて起き上がろうとするティファを、それよりも早くクラウドは抱き留めた。
「あ…クラウド?」
「…俺もゴメン、調子にのった」
「そんなのいいよ、それより怪我ない?」
「平気」
機械油の匂いのする、あまり広くはないガレージ。そこは不思議と居心地が良いらしく、クラウドは仕事の無い日は決まってガレージに籠りバイクをいじっていた。
ガソリンとクラウドの匂いとが混ざって、ティファの鼻孔を擽る。少し懐かしさを感じた。
「ねぇ、クラウド」
「ん?」
「いっぱい思い出、作ろうね」
何冊もアルバムを作って、幸せを閉じ込めておける様に。
いつか眺めては、幸せに微笑む事が出来る様に。
「…そうだな。俺達の思い出、2人で作って行こう」
「フフ、このカメラでね」
ティファはクラウドの胸の上で転がり、クラウドの肩を枕にして、カメラを握るクラウドの手を掲げた。
「良い買い物した〜♪」
「本当だな」
これからの未来を想像してか、嬉しそうに笑うティファを見つめてクラウドは、これ以上無いくらいの幸せを感じた。
「ねぇ、ティファ」
「ん?」
「こっち向いて…」
―カシャッ。
-Fin-
―――
◇後書き◇
チュー写真撮っちゃう様なバカップル誕生。笑。
なんてね。いや、でも個人的には人前でイチャイチャするクラティは好物です!
クラウドとティファの過去は少なくとも明るいものじゃなかったと思う。
ティファはボーイフレンドっぽい人がいたみたいだけど(ジョニーだったか?手紙の宛名やら、ちょこちょこ出てくる人)それでもレジスタンス組織にいるぐらいだから頼りにはしてなかったっぽい。友達の域を出ない関係だったかもしれないし。
クラウドは…CC未プレイなんで神羅兵時代は分からんです。でも根暗な性格から言って、うまく立ち回ってたとも思えないなぁ…。ソルジャーに本気で憧れて、成りたくて頑張ってるけど成れない、そうやって壁にぶち当たってて辛かった時代だと思う。
綺麗な思い出は給水塔だけ。ティファは大事にされてたみたいなので村での思い出は+αでしょうが、それを一気に失ったのだから余計傷付いただろうな。クラウドも唯一の肉親である母親を亡くしたんだから酷い話。
そうして、お互いに天涯孤独の身。その2人がゼロになって、全てを始めていくなんて素敵だな、と。
2人で家庭を築いて、たくさんの抱えきれないくらいの思い出を作っていく。
対である様な、支えあう様な、どこか寂しい、クラティのそんな健気な雰囲気が大好きだァ――――ッ!!
そしてカメラを手に入れたクラウドはカメラ小僧となり、ローアングル中心なティファ☆アルバムを製作しちまえば良いなァ!