◇前書き◇
セフィロス×ティファです。後ろめた〜い話。←自販機みたい。
ちなみにタイトルは感覚で付けたもの。つき、ついえ。
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見えない
見えない
そんな、
目隠しの恋。
未来も、過去さえも信じられないような、そんな最中で知った光の射さない恋に身を焦がす。
貴方を好きになった。
貴方が応えてくれるとか、そんなことも期待しないまま。
もっと恋は楽しいものだと思っていたけど、
これは熱情だ。
なんて重たいの。そして苦しい。
こんな激しい痛みなど知らないままでいられたのに、私は罪を犯した。
そしてまた、貴方に惹かれて
会いに行く。
素肌を晒した背中に、するすると滑らかな銀がすべる。
水銀のような液体金属を思わせるそれは男の長く伸ばされた髪で、無防備に晒された背中に零れ流れる。
「んっ…」
身をよじる様にしてピクリと背中が反応する。男はその仕草を静かな面持ちで見届けると、ニヤァと不吉な笑いを浮かべた。
まるで、捕らえた獲物の虫の息をほくそえむかの様に。
今、トドメをさしてやろう。
傲慢な見せかけの慈悲、優越感で満足した残酷な笑い。
そんな視線に組み敷かれ、背中を震わせた女はひどく切ない表情をしていた。何かに怯えて、罪悪を背負いながらも、どこか恍惚とした表情。
「ティファ…」
狂い咲いていた。
「セフィロス」
お互いに。
「どういうつもりだ?」
セフィロスはティファの背中を指先でなぞる。ふるっ…と静かに震えたティファの反応を、どこか挑発的な視線で嘲笑う。
「会いにきた」
ティファはうつ伏せた状態でセフィロスに背中を向けながら、独り言の様に呟いた。
「会いたかったの…」
少し身を起こしセフィロスを真っ直ぐに見つめたティファの瞳は濡れていて、そのユラユラとさ迷う瞳からは迷いが見てとれた。
きっと、分かっている。これは許されない行動だということは。
少なくとも、自分自身には。
だって、どうかしているだろう?
父親の仇だ、そして親友の。故郷を焼き払い、ティファ自身にさえも瀕死の傷を付けた。
今でさえ彼―…セフィロスは敵でしかない。
世界を滅ぼす、化け物め。
だのに、愛してしまった。
震えた唇からやっと吐き出す様に紡がれる言葉は、きっと声にする度に自分さえも傷付けているのだろう。
背徳感からか、青ざめた肌はセフィロスをそれでも甘く誘った。
試す様に唇を寄せると、ティファは戸惑いがちにしながらも真っ直ぐな瞳を逸らさない。
その『覚悟』と言ってもいい、強さを感じさせる意志に、セフィロスは惹かれるように唇を押しつけた。
「んっ…」
思わず洩れたお互いの声にセフィロスは冷静を失った。
―どうかしているのは自分もだ。
目的を忘れた訳ではない。だが、こんな小娘ひとりにこうして立ち止まっているとは。
柔らかい唇を噛みつく様に貪っているのは紛れもなく自分だ。
ちょっとした自己嫌悪もただの戯れに、セフィロスはティファの肩を掴むとうつ伏せた状態から仰向けになるようにした。
ティファは服を着ていなかった。
露にされた真っ白な肌に、豊かな双丘。掴んだ腕はやけに細く感じられて、少しの衝動を覚えた。
こうやって自分をエサにして、甘い香りで誘う。
「セフィロス…」
羞恥混じりの切なく呼ぶ声に、セフィロスの心が分かれていく。
余裕をなくしていって、どこか醒めていて、それすらも嘲笑して、疑っては、求める自分を抑える事もしない。
窓の外で激しく風が唸る。
2人の逢瀬を咎める様に、窓を揺らす。
その音に怯える様に、ティファは不安な瞳をセフィロスにさ迷わせた。
そんなティファを安心させる様に微笑むセフィロス。その笑顔はあまりに優しくて、ティファは胸の奥に激しい痛みを感じた。
―ああ、やはり私はこの人を愛していた。
きっと…初めて見た、その瞬間から。
だって逃れられなかった。
この戦う日々を自ら選んだ。あの日を胸にしまい、平和に暮らす事も出来たはずなのに。
夢にまで望んだ再会、それが叶った今に。
「セフィロス…私…」
不安も消えないままに、目の前にある精気のない顔に手を伸ばす。
その指先からじんわりと熱が触れた頬に逃げるように伝わった。
『…つめたい』
しかしその感触は確かなもので、ティファは安心した様に少しため息がちに笑った。
「夢見てるみたい」
―夢。
そう、これは夢なのかも知れない。
こんな望んではいけない事が叶う今夜は…きっと歪んだ夜だ。
「…夢ならば…」
覚めなければいい。セフィロスはそう囁くと、深い深い口づけをティファへと落とした。
この刹那的な感情。戯れでしかないのかも知れない。
ただ、今はそれを確かめる事はとても無粋だ。この甘い肌は手放すにはあまりに惜しく。
睨む様に窓を見やれば、ぼぅ、と淡い町灯りが滲む。
空に浮かんだ、赤い月。
それがふたりを導いたのか。
つめたい手を重ねて、ふたりは静かに
出口をなくした。
-Fin-
―――
◇後書き◇
ダークテイストなセフィティでした。
この話は同人誌用に書いてたのですが…マイナーカップリングでちょっと市場が限られているのと、発行の目処がたたないので()渋々サイトにUPしました。
今回UPしたのも大体といったラフなものなので…いつか書き直して、形にしたいです。
この話は原作沿いのアナザーストーリーとゆうか…まぁパラレルには違いないんですが、もし『ティファとセフィロスに恋愛的な関係があったら』とゆう妄想を無理からに入れてます(笑)
これからティファはセフィロスを愛しているけど旅を続けます。セフィロスへの殺意もなきにしもあらず…だけど多くは止める為に。その複雑な感情を不安定に抱えこむティファの元に、悪夢のようにセフィロスは度々訪れるのです。