◇前書き◇
クラティ前提のクラウド独唱です。超短いです。大空洞内、クラウド崩壊イベントの補足みたいな感じで。ダークテイストですので、苦手な方はご注意下さい。
―――
足下に
貴方が居る。
俺を止めようと、泣き叫んでいる。
セフィロスに吸い寄せられた俺に、叫び続けている。
やめて
お願い
戻って
ダメよ
クラウド
違うよ。
その名前は…
俺じゃないんだよ。
俺は…
人形だからね
きっと
全部
嘘なんだ。
巨大なマテリアに、乱反射する青白い光。
君の真っ白な肌までも染めて、なんて綺麗なんだろう、と焦がれた。
こんな時までも
想うのは、ただ
貴方だけなのに。
「クラウド―――ッ!!」
ティファの悲痛な絶叫は空洞内を響き渡り、それでもクラウドを止める事は叶わなかった。
内包されたままマテリアに結晶化した、セフィロスの元へ、クラウドは『鍵』を差し出した。
それを引金に、地震が起き、空気が帯電する。
セフィロスの高笑いの様な地鳴り。
「崩れるぞ!」
誰かが叫んだ。
「クラウドッ!クラウドッ!」
ティファは必死に叫び続けている。
脱出を始めた皆を、呆然と眺める。
最後に連れ去られた君は、俺に手を伸ばしていた。
「ティファ…」
その手を掴みたいと、衝動に駆られた
瞬間に
俺は呑まれた。
彼女が好きでした
もう、どうしようもないくらいに
触れた指先
たぐりよせた
引き寄せた
唇でさえ
もう、どうしようもないくらいに
足りないよ
足りないよ
終わりだなんて
考えられなかったのに
現実に染まる俺は
自分が引き裂かれる痛みに
意外と冷静で
もう、終わりだよ、と
自ら告げた
死んでゆく俺
それは偽りだから
全てが嘘だったから
悪い夢なんだ
君は綺麗で
現実に終わる夢
無惨で残酷で美しくて
それはそれは
ただの
悪夢だ
もう、この現実には
君がいないのだから
君に愛された俺もいないのだから
夢などもう見たくないよ
現実になど目覚めたくないよ
呑まれた流れに身を任せて、たゆたう意識の中。
奇妙な夢を見た。
甘い、夢。
「ティファ…」
あの手を取っていたら…
君はまた、笑っていてくれた?
おはよう、って変わらずに側に居てくれた?
偽りだったけど
嘘だったけれど
君を愛していました。
ただ、本気で。
-Fin-
―――
◇後書き◇
クラウド(+ザックスのジェノバ)の人格は私の中では一人の人間として成立してるのです。クラウドとザックスの記憶を持った、第三者で。クラウドだけどクラウドじゃない、完全に人形で。大空洞で「本物のクラウド君に会えるといいですね」と言う台詞は本当なんですよ、錯覚しているんじゃなくて。…説明が下手ですみませんι
何と言うか…そう考えてたので、あのイベントは切なかったです。偽物でも恋をしていたのだと。これは私がティファ大好きだから偏った考えなのですが(苦笑)側に居たいけれどティファはクラウド(本物)を見ているから、どうしてもすれ違ったまま。
ジェノバに還り溶けゆく意識の中で、まどろみながら想うのは、最期の最期まで君だけ。