◇前書き◇
セフィティ前提のカダティです。マイナーです。苦手な方はブラウザバックプリーズッ!

―――



時々




届く、彼の声

思念。



その響きは、深く

深く


頭の中で反響しては、いつまでも残る

その残響を不快に思いながらも
どこか
温かさを持ったソレは


母さんみたいで


だけど、全く異質なモノ

一定の温度を保ったまま
彼の声はいつも届く


ソレの温かさを、言葉にすれば…

とてもチープなものになり下がり、
僕は笑った。

ただ、その響きは

「ティファ」

少しだけ興味を持った僕は、呟いてみた。


ティファ

彼の声はいつも

貪欲にして
ただ


それだけ


『操られているのだろうな』
そう思いながらも、カダージュは歩いた。
『彼』の思念に同調すれば、不思議と自分が何をすれば良いのかが分かった。当てもないはずなのに迷わずに進めるのは、きっと『彼』の記憶がどこかでカダージュと繋がっているからだろう。

少しだけ胸が痛む。


目の前を横切る人。
追い越して行く人。
すれ違う人。
同じ方向へ進む人。

ミッドガルは人が多すぎる。


カダージュは苛ついた瞳を伏せて、往来を進んだ。









少し大通りから外れた場所。
『…見つけた』

きっとあそこだ。

Seventh Heaven


「じゃあ行ってくるねー!行こ、デンゼル!」
女の子がデンゼルと呼ぶ男の子の手を引っ張りながらドアを開け放った。
「ちょ…マリン、引っ張るなよ」
「ちゃんと5時までには帰るねー」
マリンと呼ばれた女の子は強引に男の子を引っ張って行く。

「きゃっ」
「…と」
女の子は前を見ていなかった所為で、通りを歩いていたカダージュにぶつかってしまった。
「わ、ごめんなさい」
何故か男の子が謝った。女の子はぶつけた鼻をさすりながら
「ごめんなさい」
と続いた。
「…フフ、気を付けて?」
二人の素直な様子にカダージュは不思議と悪い気はしなかった。あやすように笑ってみせると、二人は照れ臭そうに笑った。
「ホントごめんなさい。行こう、マリン」
二人は軽く頭を下げると今度は男の子が女の子の手を引っ張り、去って行った。

それを一時見送ると、カダージュは視線を目的に戻した。



「見ィ付けたっ」


彼の声が響く
波状に、次から次へと

「…」

まるで、それは制止を訴えている様で

劣等感を抱いたカダージュは、歪んだ優越感にうすら笑う。


カラン、カラン



ブロンズのドアベルが鳴り響いた。
「御免なさい、まだ準備中なの」
カウンターの奥に女がいた。食器を洗っている様だ、水が流れる音と食器が軽く当たる音がする。
白い肌に滑る綺麗な黒髪、遠目から見ても、それは目を引いた。

「…」
「…?あの、何か用事?」
丁度洗い物が終わったらしく、カウンターから女が出てきた。

「…貴方…誰?」
一言も喋らず、立ち去るそぶりも見せない僕に女は警戒しだした。

きっと、彼女が…

「ティファ?」
「え?」
彼女は一瞬目を丸くした。
「アンタ、ティファだろ?」
「どうして…私の名前を?」
戸惑う彼女。少し赤みがかった茶色の瞳が宙をさ迷う。
カダージュはその反応が少しおかしくて笑った。


「彼からの伝言だよ」

「え?」
彼女の元へ歩み寄り少し屈む様にして、
僕は彼女の耳元に囁いた。


「………」
「伝えたよ」

そう言って、彼女の耳にキスをした。
「あッ」
びくん、と身を縮めて慌てて耳を押さえる。何をするんだ、そう訴える目は潤んでいて、顔は真っ赤だ。元々肌が白い所為が、ほんのり色付いた肌が綺麗だった。

「貴方、まさか…」
言い終わらない内に、僕は踵を返す。
「また来るよ」
そう言って、後ろ手を振ってみせた。
カツカツと堅い靴が板張りの床を威圧的に鳴らす。

カラン、カラン

ブロンズのドアベルは相変わらずの音色で、逢瀬の終りを告げた。

去って行ったカダージュを見送った後、その場にティファは崩れた。
目からは止めどない涙が流れ落ちる。
「今更…何言って…」
止まらない震えを抑える為に、自分の肩を抱いた。
こんな時に誰もいない事。
救いではあったが、それ以上に寂しかった。

「……セフィロス…」
やっと、吐き出す様に囁いた名前。
過去に全部終わらせたつもりだったけれど

また、何かが動き出しているらしい。
少なくとも、私の中に。

傷となってさえ存在する貴方に、
まだ、痛みを感じている。



アイシテイル



無機質な声で囁かれたソレは

傷に鋭い爪を立てた。



「愛している」

カダージュは囁いた。
往来で囁いた、その呟きを偶然聞きつけられて道行く男に奇異の目で見られた。
呆れた様に笑ってみた。
男も笑う。

自分なりに熱を込めてみたけど
それは、とても
チープに響いて
僕は笑った。


イライラするよ。

とても、ね。



ティファ…

セフィロスが呼び続ける人

高く、低く
強い声。

一定の温度を保った波

伝えきれない程の…






「…」


彼女を奪ったって

彼を欺いたって

何が得られる訳でもなく

だけど、ただの傍観者でいるには…


彼女は
綺麗すぎたんだ。



-Fin-


―――

◇後書き◇
改行の多さがケータイ小説だなあ、という。笑。
この話は単純にセフィティへ叶わぬ横恋慕する、というシチュエーションのみで書いた記憶があるんですが、後に書いた「カメリア」という話で、やっぱりヤズーやロッズではなくカダージュである必要があったんだなあ、としっくりと自己完結した珍しい話。今思えばこそですがね。
しかし弩がつくマイナーなカップリングと言わず組み合わせ!本当総受け好きだなー、と自分でも引き気味に思います。妄想楽しや、心の栄養。鳥も獣も皆逃げろ。苦手な方のために移転先ではカテゴリ分けしたのは英断と自負しています。本当書き散らかして御免なさい。
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