◇前書き◇
サイト開設して記念すべき第一弾の話。少し手直ししています。///とか(笑)
ケータイ小説のノリで書いたので今読むと本当恥ずかしくて死ねるんですが、思い入れのある話です。


―――

先程からティファは熱心に雑誌に見入っている。普段から新聞は読むものの、雑誌にはあまり興味がないらしいティファ。それは少し珍しい行動にクラウドは思えた。
入れてもらったコーヒーを一口すすり、舌を湿らせた所でクラウドはティファに話しかけてみることにした。

「珍しいな」
「ん〜?」
返ってきた生返事にクラウドは思わず笑う。
「何見てるんだ?」
そう言いながらコーヒーカップを片手にクラウドは、ソファに座り雑誌を眺め続けるティファに歩み寄った。

雑誌には様々なデザインのリングがレイアウトされた記事が載っていた。

「…」
「…」
ティファの隣に座ってはみたものの、当のティファは無反応だ。仕方なくクラウドはコーヒーをまた一口飲み、一緒に雑誌を眺める事にした。

「…素敵」

ティファが呟いた。
「ん?」
「これ、すごく良いと思わない?」
そう言いながらティファは細い人指し指で雑誌の一辺をなぞってみせた。
促されるままに指された箇所を見ると、そこには少し武骨な感じのシルバーリングがあった。
重量感がありながらユニセックスなデザイン、鋭いまでの輝きは洗練されていた。
ふと、ティファの綺麗な手を見る。華奢な指に、そのリングが填められた姿を想像してみる。

「ああ、良いリングだな」
「本当?何かクラウドに意見してもらうと嬉しいな」

この時、初めてティファは顔を上げた。
「あ」
慌ててティファは顔を反らす。随分と距離が近い事に、今更気付いたらしい。一方クラウドも、不意打ち気味に重なった大きな瞳に心拍数が跳ね上がっていた。

「あ、いけない!明日の注文整理しなきゃ…」
そう言ってティファは雑誌を畳み、階下の店へと向かって行った。
経営を再開したばかりのセブンスヘブンは盛況で、ティファは忙しい毎日を楽しんでいた。クラウドは少し寂しく思いながら、今はこうしてのんびりと過ごしている。
つい半年前までは激闘の日々だった。闘いが終わって少しの間は仲間達と過ごしていたけれど、今はもうそれぞれの生活を送っている。
クラウドとティファは当然の様に、共に暮らし始めていた。
清潔なベッドの上で朝を迎えて、テーブルの上には毎日きちんとした温かい朝食。
クラウドは未だにこの習慣に慣れない。
毎日を規則正しく過ごした事が少ないからかもしれない。有難いとも思うけれど、少し居心地の悪さを感じた。
「おはよう、クラウド」
変わらない調子で挨拶をするティファ。
「ああ、おはよう…」
「まだ眠いとか?フフ、今スープ出すね」




温かいスープ、優しい味はゆっくりと渇いた体に染み込む。美味いな、と素直に思いながら柔らかいパンも頬張った。
「パン、美味しいでしょ?ちょっと歩いた所に焼きたてのパンを売ってるお店があるの。朝早くから開いてるから何だか楽しみになっちゃった」
サラダをフォークで寄せながらティファは幸せそうに笑った。


幸せ、なんだろうな。

クラウドはふと、思った。

自分は本当に幸せなんだろうな。




だけど…


何を恐れているんだか、

幸せ、そう思う事が

………うまく、言えないや。

ローテーブルに置かれた雑誌が目に入った。
雑誌は今月号だ。

クラウドは立ったまま雑誌を手にとり、昨日ティファが気に入っていたリングが掲載されているページを探した。
階下からティファの声が聞こえる。電話をしている様だ、相手は業者だろう、注文をしている。

「…っ」
お目当てのページを探しだし、クラウドは暫く眺めた。







「はい……はい、じゃあ配達お願いします。」
―ピッ
コードレスホンを所定の位置に置き、ティファはひとつ溜め息をついた。
「これで注文終わりッ!…よね」
そう言いながらリストを眺め、カウンターの席に座った。
「…ちょっと忙しいかも」
ティファはチラリと壁に掛けた時計を見た。
「…」
11時を回る所だった。
―トントントン

階段を降りる音がする。

「ティファ、ちょっと出てくる。何か要る物はあるか?」
「あ…、いえ、ないわ」
「そうか。すぐ戻るよ」
「ええ、あ、待って!鍵持って行って」
「…、出かけるのか?」
「ううん、一応…はい!いってらっしゃい」
「…ああ、行ってくる」

―カランカラン
店のドアに付けられたドアベルが鳴り、クラウドは出かけて行った。
見送りを終えたティファはまた時計を見る。
先程から5分も経っていない、時計は静かにティファを駆り立てた。





―カランカラン

「いらっ…あ、お帰りクラウド」
クラウドが帰ってきたのは夜も更けてきた頃だった。
そのまま指定席であるカウンターの隅に座ると、クラウドは「悪い、遅くなった」とだけ呟いた。

セブンスヘブンは相変わらずの盛況で、所々で仕事帰りだろう男達が陽気に酒を酌み交している。
中にはティファ目当てで来る輩もいるが、陽気で明るい雰囲気にティファを口説く事を諦め、それなりに楽しんでいた。
ティファは慣れた手つきで酒を作るとクラウドに差し出した。
「ありがとう」
「大丈夫?疲れてるみたい」
「そんなことないさ」
「何か食べる?」
「ああ」
「ちょっと待っててね」
そう言うと、ティファはカウンターの隅にある簡易調理台へと移動し、何かを作り出した。

ティファの料理を待つクラウドはグラスを弄びながら客達を眺めた。復興工事の関係者だろうか、体格の良い男達が賑やかに笑っている。向こうのボックス席には楽しそうに笑う男女がいる。同じカウンター席には女が2人、男が1人。
皆、幸せそうだ。


「はい、お待たせ」

視線を元に戻すと、テーブルの上には出来たてのオムレツとパン、湯気が上るポタージュスープが置いてあった。
「ごめんね。後でちゃんとしたもの作るわ」
「十分だよ」



「ふ〜…」

汚れた食器を洗い終えて、ティファは大きく伸びをした。
今日も忙しく、食器を洗う事に大分時間を割いてしまった。
これから店内の掃除をしなければならない。
ティファはチラリと階段を見た。
「クラウド…寝ちゃったかな」

ティファは少し残念そうに呟いた。そしてもうひとつ軽い溜め息をつくと、よし、と気を入れ直しホウキを手にとり清掃を始める事にした。







リビングでクラウドは例の雑誌をパラパラと読んでいた。
流行りの店やファッション、よく読んでみれば様々な情報が載っている。ジャンルはと言えばタウンガイドだろうか。くだらないな、趣味が合わないので物色する気にもなれずクラウドはそう思った。
―ガチャ

リビングのドアが開いた。クラウドは視線をそちらへ移すと、濡れた髪をタオルに包み、長く細い脚を露出したシャツ一枚だけとゆう姿のティファがいた。
「あ、クラウド、起きてたの?」
「…ああ」
「やだな、こんな格好…」
「…、気にするな」
「…ごめん」
風呂上がりらしいティファはキッチンの冷蔵庫へ向かうと、中からミネラルウォーターを取り出して一口飲んだ。

「店は終わったのか?」
「うん、ちょっと時間かかっちゃったけど」
クラウドに遠慮しているのか、ティファはキッチンから動かないでいた。
「コーヒー入れようか?」
「いや、いい」
たわいもない会話のやりとりに、クラウドは少し焦りを感じた。
それは、ポケットに忍ばせた包みの所為だ。

クラウドは雑誌をローテーブルに放ると、ティファを見た。
「ティファ、ちょっとこっちに来てくれ」
「…、うん」
ティファはタオルを首に掛けると、クラウドの座るソファへと歩く。そして少し不自然な距離を置いて、ティファはソファへ座った。
格好を余程気にしているのか、自分の膝に手を置く。別にジロジロ見た訳ではないが、ティファの白い肌はほんのり色付いていて、とても綺麗だ。
「…なにかな?」
こちらを向かずにティファは言った。照れ隠しなのか、トントンとスリッパの踵を床に突いて遊んでいる。
クラウドはそんなティファの仕草が堪らなく愛おしく感じ、思わず頬が綻んだ。

おもむろにクラウドは立ち上がり、ティファに密着する様に隣に座り直した。
「え、なに?なに?」
クラウドの突然の行動にティファは焦りながら、ついにソファの隅へと追いやられてしまい逃げ場をなくした。

「な、何?」
驚いて大きな目を見開くティファ。クラウドは無言で自分のレザーパンツのポケットジッパーを下ろした。
クラウドは小さな包みをそこから取り出すと、一部始終を見守るティファに差し出した。
「?」
「…、開けてみて」
「え?良いの?」
手のひらに収まるサイズの箱は綺麗に包装され、リボンがかけられていた。
ティファは確認の為にクラウドを見る。黙ってクラウドは頷くと、更にティファに箱を押し付ける様に差し出した。
ティファはワクワクしながらリボンをほどいて、綺麗な包装紙が破れない様に取り去る。すると黒い箱が出てきた。
「開けてみて」
「う、うん」
箱を開けると、中にまた箱が入っていた。今度はビロード生地の灰色の箱だ。
ティファはそれを手にとり、そっと開けてみた。

「あ…」


あのリングが入っていた。


「クラウド、これ…ッ」
「プレゼントだ」
「…嬉しいッ!ありがとう、クラウド!」
そう言うとティファは箱ごと指輪を抱きしめた。
「ティファ、貸してみて」
「うん!」
クラウドは箱からリングを取り出し、ティファの右手をとった。
この時、少しティファは人知れず落ち込んだ。
クラウドはティファの薬指にリングをはめた。
華奢な指から伝わる熱が愛しくて、胸が痛いまでに苦しい。

やはり、そのリングはティファによく似合っていた。

「…やっぱり素敵」
自分の右手をかざして、ティファは呟いた。
「…似合うよ」
「ふふ、嬉しい」
そう言って、ティファは甘える様にクラウドの肩に頭を乗せた。
「あ、ごめん、濡れるね」
慌てて体を離すティファ。クラウドは苦笑しながら残念だ、と肩をすくめた。
「あのねぇクラウド。こんなタイミングで恥ずかしいんだけど」
突然ティファが立ち上がり、窓辺に置いてあるチェストの引き出しを開けた。「?」
「はい、コレ!」
今度はティファがクラウドをソファの隅へ追い詰める様に座った。
ティファから差し出されたものは、手のひらに収まるサイズの白い箱だった。上品なリボンもかかっている。
「開けてみて」
「…ああ」
クラウドはリボンを取り去り、包装紙を所々破りながらようやく箱をあけた。
箱を開けると、黒いビロード生地の箱。

「…まさか」
思わず呟いたクラウドに、ティファは笑う。
黒い箱には、ティファと全く同じデザインの指輪が入っていた。

「………」
「ふふ、あはははは!」
堪えきれなくなったのか、涙を浮かべてティファは笑った。クラウドに至っては絶句だ。

「はぁ〜…私ね、クラウドに似合うリングを探してたの。そしたらクラウドがこれがいいって言ってくれたでしょ?何か自信ついちゃって、思わず今日買いに行ったの」
一通り笑ったティファは息を整えながら涙を拭いて、説明しだした。
「ねぇ、填めてみて」
「……」
「…、…怒った?」
ティファは上目遣いで機嫌を窺う。本人にその気はないらしいが、これは犯罪的に可愛い。
「いや…」
「ティファに任せる」
「えッ…ズルイ!」
「俺も填めてあげた」
「それは…そうだけど…もう!」
ティファは真っ赤になりながら、少し乱暴にクラウドの右手を取った。
ティファはクラウドの綺麗だが逞しい指を眺める。
こうゆう事はよく分からないのだ、どの指に填めようか悩んでいる。
ややあって、ティファは自分と同じ薬指にリングを通した。

「なぁ、ティファ」
「何?」
「ストライフデリバリーサービス」
「え?」

ティファが顔を上げた。
「何でも屋、再開しようと思うんだ」
「…」
「と言っても運送中心に、だけどな」
「…」
クラウドの話をティファは黙って聞いていた。クラウドは少し目を伏せると、ティファに填めてもらったリングを見る。
「だからさ、これから家を空ける事が多くなる思うけど…」


「一人じゃないから…俺がいない時はそれを見てよ」



そう言い終わると、クラウドはティファに笑いかけた。
「…うん、クラウド。頑張ってね」
「ああ、任せておけ」
クラウドの自信たっぷりの返事に、ティファも微笑んだ。

「あのね、クラウド。私も…側にいない時は指輪、見てね」

「ああ」

「ふふ、お揃い。だね」

悪戯っぽく笑うティファに、クラウドは敵わないなぁ、と苦笑した。

本当は、左手の薬指に
その存在を主張して欲しい所だけど。


仕事、頑張ろう。
ティファを幸せにしたいから。

今以上の
幸せなんて味わった事ないけど


きっと、
それは俺が唯一
君にあげられるものだ。


幸せに不慣れな俺を、
今は許していてよ。










「じゃあまずは事務所作らないと!」
「そうだな…後、広告もだ」
「任せて!お店出した時に良い所覚えたの」
張り切る2人の鼻孔を香ばしい匂いが擽った。
「「あ」」

窓から見える空は白んでいる。結局、夜が明けてしまったらしい。

2人は再び向き合うと、お互いに微笑んだ。

「パン、買いに行こうか」
「賛成!」





-Fin-


―――

◇後書き◇
右手の親指が痛い…。無駄に長くなってすみませんιもう、この歌はクラティ絶好調で妄想絶好調です。爆。TRICERATOPSの歌大好き!銀骨(愛称)大好き!ティファCPな歌が満載です(笑)是非聴いてみて下さい☆
今回は清いクラティでした。闘いが終わって半年、ティファは店を再開したばかり…とゆう設定。まだ店が軌道にのったとは言い切れないのでデンゼルを引き取るのはまだ先です。マリンは父ちゃんと石油発掘現場にいます。後にティファの元に預けられる。
今回は原作沿い?な清いクラティでしたが、次は何かアダルティなの書きたいな、と思います。ここまで読んで頂き、有難うでした☆

という、無駄にテンション高い後書きがもう…恥ずかしくて死ぬ事をなんと言えばいいの?死因はそれです、って何かにしたためておきたい気分。ガラケのボタンをポチポチ押しての執筆だったので親指の付け根の筋肉が乳酸パーティーで、執筆終わった嬉しさでハイになっていたんだと思います。イラっとしてるのは私もです。暗黒歴史!あ、紹介しました「Gothic Ring」という曲は本当に素敵なので是非試聴してみて下さい。個人的にポジティブなクラティを妄想させる「FEVER」もオススメ。名曲。
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