◇前書き◇
ルーファウス×ティファです。ジュノンにて、もうひとつの目覚め。

―――

「大人しくしろ!少しでもおかしな真似をすると撃つぞ!」
威勢のいい威嚇の声を張り上げながら、3人の神羅兵士が艇の甲板になだれ込む。
籠城を決め込むには場所は最悪で、抵抗すれば射殺は免れない。

景色を見やれば丁度、大空洞のバリアが完成された時だった。






「全く、お前達のリーダーにも困ったものだな」
操縦室に連行されたバレット、シド、レッド]V、ヴィンセント、ユフィの面々をルーファウスは皮肉に満ちた笑顔で迎えた。
ルーファウスの側にはスカーレットと宝条の姿があるが二人とも侵入者には興味がないらしい、宝条に至ってはブツブツと何かを呟きながらノートパソコンのキーボードを忙しく打ち鳴らしている。
そんな宝条を横目で一瞥すると、ルーファウスは呆れた様に髪をかきあげた。

「おや」

ルーファウスの目に留まったのは、バレットの腕の中で眠るティファの姿だった。
ウェポンの衝撃波に当てられ、気絶してしまったのだ。バレットの腕に抱きかかえられ、眠る顔は意外と幼かった。
青ざめた肌、すらりと伸びた脚は男の腕よりもずっと細い。
「…」
ヴィンセントがルーファウスの視線に気付いたのか、ティファを隠す様に立ちはだかった。
ルーファウスは鼻で笑うと
「連れていけ」
と兵士に命令を下した。


曖昧な眠りを貪る様に
緩慢に瞳を開ける



目に映ったのは、無機質な天井。
まだ輪郭がぼやけて見える。


光が目に染みる様に痛む。

泣いてしまいそうだ。

そうだ
ここは?

確認しようにも、身体が鉛の様に重い。


「…ぁ」

声を出そうとしたけれど、それは空気を吐き出したに過ぎない。


喉が渇いたな。

「…」
普通に暮らしていた日々が、随分と昔に思えた。
朝起きて、水を飲んで、モノを食べて、生きていた。

水が染み出す様に、記憶が甦る。
もう消える事はないシミの様に、広がっていくイメージ。

ああ、そうだ。
クラウドに…会いたい。

目が覚めたら
知らない場所で
誰もいないのは

ミッドガルに来た日とで
これで2度目ね


ティファの目尻から涙が流れ落ちた。



「目が覚めた様だな」
『…誰?』
そう思ったが、首を持ち上げるのも億劫だ。
「…」
威圧的な足音と共に気配が近づいてくる。ティファはゆっくりと、再び目を開けた。

ああ、最悪。

視界を埋めたのは、ルーファウスだった。悠長に、余裕めいた口元は笑っている。
「お前を監視しておけば、奴から何かしら接触してくると思ってな」
「…」
「気分はどうだ?」
ティファはルーファウスの言葉を無視するように目を閉じた。
「フフ、相変わらず生意気だな」
ルーファウスは溜め息混じりに、独り言の様に呟く。
ふと、ティファは額に熱を感じた。
目を開けると、ルーファウスが額に手を置いていた。
「赤みがかった…茶色の目だな」
「…」
「そう邪険にするな、ティファ」
そう言ってルーファウスはティファの瞼を撫で、瞳を伏せた。


「後で水を持ってこさせよう」

そう言いながら、ルーファウスはティファから離れた。

「おっと」

突然ルーファウスは踵を返し、再びティファに歩み寄った。


「これは仕返しだ」


「…んっ…ふ」


深い、深い
くちづけ。





ようやく唇が離れると、ルーファウスの綺麗な水色の瞳がティファを捕えた。


「気にしているんだ。親父と似ている事は、な」


ティファは理解した。

演説好きなのは、そっくりね

ああ、そう言えば
彼の反応が良かったっけ

ティファは意外と幼いルーファウスに微笑んだ。



そして、再び深い眠りにおちていった。



「アバランチのメンバー4名脱走。残る2名は公開処刑…」


神羅兵士の能無しぶりには気が滅いる。
ルーファウスは額を押さえながら溜め息をついた。


『公開処刑とは趣味の良い事だな。親父の人事には全く敵わんよ…』




大丈夫、うまくやるさ


ルーファウスは悠長に足を組み、皮張りの椅子に身を預けた。


諦めた訳ではない。

ブラインド越しに見える、日々近づいてくる赤い星。


世界を押し潰す様に、空にのしかかる赤。

その先に、希望を見い出していた。

目を長く閉じ、思い出す。
思い描くのは、初めて彼女を見た時の様な、
光。
それを傍らに置くことが出来たなら。
終末を前にそうして甘い夢に溺れる。


-Fin-


―――

◇後書き◇
いきなり嫁認定な社長が読み返してみたらこっ恥ずかしかったので少し改変しました。笑。
「演説好きなのはそっくりね」というティファの毒舌に勢い良く反応する社長は今でも鮮明に思い出せます(笑)そうやってコンプレックスを擽られて、立場上反抗される事自体なかった自分に意見だと…!と、そういう諍いからいつしか気になる存在に…とかおおおお鳥肌がががが。大丈夫、自分に引いてるだけでそういうシチュエーションが嫌いなのでは決してありません。しかし、このままではただの王子様キャラのイメージなのでリメイクで社長のキャラがもう少し掘り下げられると嬉しいなあ、とか思ってます。
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