夜中、ガチャリと鍵が開く音がしたあと、扉が開く音がした。そのあとすぐに足音が聞こえた。それが晋助のものだとすぐにわかったけれど、寝たふりを続けた。

「…寝てんのか」

寝室に来て、そう呟くと彼はベッドに座った。ベッドからギシリ、と軋んだ音がした。
脚に何かが触れた。くすぐったいな、もう。晋助の指だ、すぐわかる。何度も触れられた指だ。愛しい人の指先。わからないわけがない。晋助の指先はスルスルわたしの脚をなぞる。晋助は脚がいちばんのお気に入りのようだ。何度も、何度もなぞる。脚がゾワゾワしてわたしはとうとう起き上がった。ギロリと晋助をにらみつけるが彼に効果はない。

「…きたの」
「俺がここに来ちゃ、まずいかィ?」
「…そんなことないけど」
「なら別に怒られるこたァねーよ。それに合鍵で入ってきてるからな、不法侵入でもねェ。おめェさんこそ、何寝たふりなんかしてんだ」
「気づいてたの」
「ククッ、気づかねーわけがねェ」

また、わたしの脚に触れる。脚から足へ、足の裏に触れられると余計くすぐったい。

「もう、いいでしょ」
「…まだ」

片目が怪しく輝いたように見えた。いつもそうだ。たまにふらりとやってきてはわたしをその目で見つめて、それからわたしを抱いて、しばらくいたかと思えばわたしがいない間にふらりといなくなる。こんな夜中に抱かれるのは嫌かな。だって眠たいもの。

「今度はいつまでいる予定?」
「さァな。…いっしょにおめーも来るか?」
「…止めとく。わたし指名手配されたくないもん」
「ククッ。だが、過激攘夷志士である俺をこうやって家に入れてる時点でおめーも共犯者だ」
「共犯者か。…悪くない響きだね」

晋助がにやりと笑って、どちらともなくキスをした。そのまま、ベッドに押し倒される。ああ、やだな、眠れない。妖しく輝くその目が離せない。また晋助の指先が、脚に触れる。それがひどく優しくて、やっぱり愛おしい。大勢の人に噛みつく獣のくせに、わたしには優しく触れる。首筋に痛みを感じた。ああ、噛みついたな、どうしようもないな、この獣は。

「どうしようもないなあ、本当」
「…俺ァ、気に入った女じゃなきゃ抱いたりしねーよ」
「それはどうも。…好きよ、晋助が好き。あいしてる。…たまにはいいでしょう?」
「ハッ。…悪くねェな」

晋助がまたわたしの首筋に顔を埋めた。
このまま、夜が明けなければいいのに。