お互い様と笑う夜だった
リクエスト「指舐め」より
媚薬を飲んだ入間と彼女を焦らす王馬の話

・目隠し、拘束
・フェラ(イラマ・飲精含む)
・言葉責め


調教という単語が頭の中に浮かび、また消えていった。確かにこれからしようとしていることは紛れもなく調教なのだろうと王馬は一人で頷く。視線を落とすと、後ろ手に拘束され目隠しをした恋人――入間美兎が板張りの床に正座していた。媚薬入りのジュースを飲ませてから約十分、効果が出てきたのか頬を赤らめ、どうにか快楽を享受しようと身をよじっている。王馬はベッドに腰かけながら、その姿にほくそ笑んだ。
「入間ちゃん」
「な、なに?もうこれ外せよ。この変態」
「ダメ。オレに変な薬飲ませようとしてきたのはそっちでしょー?ねぇ、そろそろ欲しいんじゃない?」
足先で彼女の太ももをなぞる。冷たい裸足の指が太ももを撫で回していく感触にその身を震わせながら、入間は徐々に足を開いていく。王馬は短いスカートから見える真っ白な太ももに生唾を飲み込んで、器用にスカートの中に足を潜り込ませた。やわやわとした内ももを辿り、下着に触れそうになると彼女は小さく喘ぎ声を上げる。しかし王馬は足を抜き、ダメだよと笑った。
「そうだなぁ。じゃあ、オレの言うこと聞けたら許してあげようかな」
入間を少し自分に近寄らせて膝立ちにさせる。期待をしているのか、そう命じられた入間はどことなく嬉しそうで、その性に対する従順さに王馬の加虐心が顔を出す。
「あーんして」
グロスが塗られてつややかに光るその小さな唇を開かせる。白い健康そうな歯の向こう側に唾液で濡れた赤い舌が見え隠れして、見慣れたはずの部位が実に淫靡に見えた。ちゃんと舐めてねと言って唇に人差し指を押し当てる。そのままゆっくりと指を滑らせて、口の中に入れた。入間は予想外だったらしく一瞬動きを止めたものの、すぐに順応して指を咥えこむ。舌先で遠慮がちに爪のあたりを舐めていたかと思えば、根元まで咥えこんで唾液を絡ませながら優しく舌を往復させる。普段、彼のものを舐める時を想起させるような動き。黒い目隠しの向こう側の、劣情を浮かべた瞳を思い浮かべて王馬は肌が粟立つ。媚薬の影響なのか、元々の体温が高いのか熱いほどの口内で冷たい指が溶かされていくようだった。
「いい子だね」
そう声をかけると入間は嬉しそうに口端を上げる。空いている手で彼女の頭を撫でながら、指を引き抜いて、今度は中指と一緒に口内を侵食していく。指の間を丹念に舐め、熱い舌先で強弱をつけながら指を溶かす。指先に何度もついばむようなキスを落とし、根元にはマーキングをするように甘噛みを与える。単純作業ではない、矢継ぎ早な変化に王馬は彼女を褒めた。すると彼女の興奮が空気中に伝染していき、部屋全体が熱っぽさを持ち始める。王馬は優しく、甘い言葉を囁きかけた。
「……入間ちゃん、そろそろ気持ちよくなりたいよね?」
入間は何度も首を振って肯定する。媚薬に犯された体に触れてほしくて必死な彼女に王馬は絶望的な言葉を浴びせかけた。
「ふふ。何期待しちゃってるの?聞いただけだよ。もう少し頑張ろうね」
あからさまに落胆した様子の彼女がひどく愛おしい。わずかに開いた口から涎が顎を伝って首筋まで流れ落ちていくが、王馬はそれをぬぐおうともしない。まるで飼い主に媚びを売る、従順な犬のようだと入間にじっとりとした視線を送る。その視線に気が付いたのかぴくりと肩を動かした彼女の鋭敏な神経に、ますます犬のようだと支配的な気持ちは高まるばかり。必死に舌を動かす彼女を見下ろしながら、気まぐれに指先で頬の内側を優しく擦ると入間は鼻から息を漏らした。気のせいか、と思ったものの断続的にそれを繰り返していると太ももを擦り合わせ始め、王馬は低い声で彼女を攻めた。
「お口の中触られて気持ちいいの?」
入間は戸惑いがちに頷く。王馬は新しい玩具を見つけたかのように邪悪な笑みを浮かべた。
「へぇ。ここも感じるなんて本当に淫乱なんだね。……こんなに一生懸命尽くしてくれてるんだし、ご褒美あげようかな」
そう言ってゆっくりと口内をくすぐっていく。柔らかい頬肉、口蓋、舌……優しくなぞっていくと入間は面白いほどに反応をする。特に舌をくすぐられるのに興奮するらしく、王馬が指の腹で撫で上げる度に浅く呼吸をしながら、愛おしそうな声を出した。
「もっと奥はどう?」
ゆっくりと喉奥まで指を差し込まれてくすぐられる。その圧迫感にすぐに苦し気な声と共に、涎を垂らしながら咳き込むと王馬が嘲笑的な笑い声を上げながら指を引き抜いた。
「あはは。ごめんごめん。苦しかったね。……本当みっともないなぁ」
突然耳に入ってきたその発言に入間は唇を噛みしめる。しかしすぐにこじ開けられて再び指を入れられ、また先ほどの様に彼を喜ばせようと舌を動かし始めた。目隠し越しに彼がどんな表情をしているのか、想像するだけで入間の心も体も疼いてしまう。ご機嫌取りのような舌使いを受けながら、王馬が話を続けた。
「ねぇ、指舐めさせられてそんなに興奮して……恥ずかしくないの?それとも」
一呼吸おいて、彼が微笑むのが分かった。敏感になった自分の感覚に入間は呆れそうになるが、彼の言葉でそんなことを考える間もなく精神がぐずぐずになっていく。
「ずっと、こういうことをされたかったの?」
太ももを擦り合わせて抑えられない興奮をどうにか発散させようとするも上手くいかない。入間は情欲で脳が支配されていくのに抗うことなく言った。
「ひゃ、れたかった」
指を口に含んだ状態で答える彼女に王馬は更に淫猥な質問を繰り出す。
「へぇ……じゃあ、こんなやらしい妄想して一人でしたりしてたのかな?なんて、そんなわけないかー。」
小さな声で肯定すると王馬は再び嘲笑的な声を出す。その声だけで入間は絶頂を迎えられそうだった。彼に支配され、嘲笑われるだけで快楽を得てしまう自分はなんて浅ましい存在なのだろうと恥じる。しかし、そんな自分を愛してくれる王馬に愛しさを感じてしまうのだった。
「随分素直だね。じゃあ、今回はその素直さに免じて許してあげようかなー」
指を抜かれて、もう片方の手で頬を撫でられる。冷たい手が熱に浮かされた自分を𠮟りつけているようだと思いながら、彼の言葉に喉を鳴らす。しかし彼はそう優しくはない人間なのだった。
「っていうのは嘘」
くすくすと笑いながら叩きつけられた発言に入間が再び落胆するのを見ながら、王馬は彼女に告げる。
「オレも我慢できなくなっちゃった。だからー、もう少し……ね?」
入間はその言葉の意味をすぐに把握し、王馬の顔がある辺りを見上げる。王馬は察しのいい彼女に微笑みかけて、でも先に手を洗って来るねと言って部屋を出た。扉の締まる音がして、入間は熱い吐息を吐き出す。早く触れてほしい。早く、彼のもので口内を犯してほしい。そんな思いで豊満な体を揺らす。しかし、五分ほど経っても彼は戻ってこない。置いていかれたのかもしれないと王馬の名を呼ぶが反応はない。あらゆる場所に視線を向けながら、彼の名を呼び立ち上がろうとした瞬間後ろから抱きしめられた。その冷たい感覚に入間は安堵のため息をつく。目隠しの下で涙が滲んだのを彼は知っているのだろうか。
「ごめんねー。びっくりさせようと思っただけなんだけど、入間ちゃんが可愛くてさ……」
「ひぐぅぅ……。こ、怖かったんだからな!!」
「いなくなっちゃうかと思った?やだぁ、オレそんな酷い奴じゃないよ」
それなりに、酷い奴だろうと思ったが入間は黙っていた。
「もしかして放置プレイにも興味あるの?……じゃあ今度はそうしてあげるね」
勝手に耳元でそう囁く王馬に入間は肯定も否定もしない。王馬相手ならば、彼女は何をされたって許してしまえるのだから。目隠しも拘束も外さないまま王馬は再びベッドに座る。入間をまた自分に引き寄せて、膝立ちにさせる。
「キミがあんまり可愛いから、すっごい興奮しちゃった……」
甘えるような口調と共にベルトを外す音がして、入間は息を飲む。発情しきった吐息を漏らす彼女の頬に、熱いものが当てられて入間はとろけた声を出した。
「あっ……」
「嬉しそうだね。……ねぇ、舐めて?」
入間は先端を探り、そっとキスを落とす。小さなリップ音が静かな部屋に響き渡った。ずっと欲しかったそれを優しく咥えて舌先で舐める。先走りがとぷとぷと溢れ出して入間の口内に流れ込み、その慣れ親しんだ、生臭い味を堪能するように入間は唇をもぐもぐと動かした。王馬が小さく声を漏らすのが分かり、ぬるついた舌先で鈴口をつつくように攻め、そのまま舌全体を使って亀頭を撫で回す。ざらついた、熱い舌に一番敏感な場所を攻められて王馬は深く息を吐き出す。入間は、そんな王馬の興奮を感じ取りながらカリ首の段差に舌を這わせて攻め立てる。舌先が往復する度に王馬のものはびくびくと反応して、それに比例するように王馬は声を上げた。
「は、ぁ……気持ちいいよ。美兎はいい子だね」
美兎と呼ばれ入間の体は疼く。焦らされた彼女の体は限界に達していた。名前を呼ばれるだけでも興奮する体に仕立て上げられた入間の頭には絶頂を迎えたいという気持ちでいっぱいだった。突然目隠しが取られて薄明かりが視界を奪う。何度か瞬きを繰り返し、顔を上げると妖艶な笑みを浮かべた王馬がそこにいた。
「あは。すっごいエッチな顔してる」
劣情を浮かべた瞳には王馬しか映らない。早く、触れてほしい。許してほしいという一心で彼のものを一気に奥まで咥えこんだ。喉奥に到達した彼のもので圧迫され、先ほど指でくすぐられた時の様に吐き気がこみあげてくるが、それを我慢して顎を動かす。
「ん……っ。ああ、そうだ。いい子には、対価を与えないとね」
そう言った王馬が足先で入間の太ももをなぞる。先ほどのような寸止めをされるのかと入間が訴えかけるような視線を向けると、王馬が首を振った。スカートの中に入り込んだ冷たい指先は、ぐっしょりと濡れた入間の下着に触れた。指先で秘部を押されて、入間の体に甘い衝撃が走る。王馬のものを咥えたまま、その快楽に身を委ね、動けないでいると王馬が冷たい声を出した。
「ねぇ、誰が休んでいいって言ったの?」
入間の頭を掴んで自分好みのストロークを強いる。緩慢で、しかし深くまで咥えこまなければならないその動きに入間は苦しそうなうめき声をあげるが王馬は気にも留めずに入間の髪をくしゃくしゃと撫でまわす。
「ほらほら、気持ちよくしてほしいならもっと頑張らないと」
その言葉に、入間は涙目になりながらも必死で応える。舌を絡ませながら、喉奥の熱いところまで咥えこみ口をすぼめて吸い上げるようにして亀頭辺りまで舐め上げる。強弱をつけながら何度もその動きを繰り返して、王馬の絶頂を誘う。自分がひどくだらしない顔をしているのは理解しているが、それを王馬に見られているのかと思うと興奮してしまうことも実感していた。王馬が可愛いよと微笑む度に、きゅんきゅんと体が疼いて仕方ない。入間の努力に応えるように王馬の指先が下着越しに動く。その都度、愛液がとろとろと溢れ出し床に滴り落ちて王馬はそれを笑うのだった。
「すっごい濡れてる。恥ずかしー。足でされるのがそんなにいいんだ?」
そんな言葉にも興奮してしまい、入間は深く瞬きをする。恥ずかしさを紛らわすように、わざとらしく音を立てながら彼のものを自分の口から抜いて、続けて張った亀頭を甘噛みするように口に含んだ。優しく唇を動かしながら舌でそこをいじめると、王馬も声を押し殺そうと手で口を覆う。王馬はくすぐったい快楽に耐えながら、指先で入間の秘部を攻めた。いやらしい水音が響き、入間は耐え切れずに口を離す。彼の器用な動きで絶頂を迎えそうになると、王馬は足を止めて意地悪そうな表情を作った。
「ダーメ。我慢して?」
切なげな表情を向けても、意地悪な顔のまま彼は何もしてくれない。しかし愛おしそうな声で入間に語り掛けた。
「オレにいじめられるの好き?」
「……大好き」
そう答えて再び咥えこむと、怒張したそれは大きく脈を打った。絶頂が近いことを知り、入間は唾液をたっぷり絡ませながらあたたかい口内で彼のものを扱き上げる。
「ほん、と…淫乱だよね」
淫乱にしたのは誰だという思いが頭をよぎり抗議するような気持ちでストロークを速める。王馬のうめき声に近い、喘ぎ声が聞こえた。
「あー…イきそう……」
興奮した彼の声といやらしい音が部屋に響き渡り、思い切り頭を掴まれた。
「は、あぁ…‥ッ。全部飲めたら、もっといいことしてあげる」
そう言って王馬は吐精した。口内を熱い精液が満たし、入間はその幸福で自分がとろけていくのが分かった。長い吐精が終わり切るまで頭を押さえつけられ、体中が熱くなる。欲を出し切った王馬のものが入間の口から引き抜かれ、彼女は美味しそうに口内を満たす精液を飲み干した。そして再び先端を咥えて、全て搾り取るように吸い上げる。その優しい刺激に王馬は恍惚とした表情を浮かべる。
「あ、うぅ……ほんとに、淫乱なんだから……」
王馬に頭を撫でられて彼女は微笑んだ。
その後王馬は手早く下着とズボンを履き、入間の後ろに回って拘束を解いた。そうして再び、今度は先ほどよりも強く抱きしめる。
「よくできました。いい子には、ご褒美あげないとね」
耳元で囁くと入間は王馬から逃げるようにしてベッドへと飛び込む。そうして子犬のような笑みを浮かべて言った。
「はやくちょうだい」
本当にどうしようもない人だ、と言って王馬は苦笑する。そうしてベッドへと上って彼女を抱きしめるように寝転がった。
「キスしてもいい?」
「あ、でも……」
「大丈夫だよ」
飲精後のキスを嫌がる彼女をなだめ、そっと唇を重ねる。苦い味が王馬の口に広がって、何故だかひどく興奮した。何度も簡単なキスを繰り返し、彼女の顔を見る。媚薬と先ほどの刺激でとろとろになったその表情を見て、王馬は再び加虐心を煽られた。そして気づく、自分だってどうしようもない人なのだと。