あとがき


随分なネタばらしになりますが、実はこの作品は、本当にあった話を元にして作ったものです。
当然お話にものすごく脚色は加えていますし、テイルズオブシンフォニアという作品の世界感やストーリーにうまく絡むようにかなりの改変も行った結果、世界をまたいでも貫く愛の深さを描くことになり、すっかり壮大な物語になってしまったものだなあ、なんてことを思いながら書き上げることになりました。

ただ、一人の女とダメな男が辿っていく『一方的な別れからの復縁』というのは実際にあった話で、作品内で使われているセリフや彼らが起こす行動などの一部は、現実に起こったものをもじって作中でも使用しています。ベースになっているのは夢のお話ではなく、ふたりの男女が辿ってきた、本当にあった夢のような話でした。

夢をぶち壊された!なんて感じてしまわれた方、本当にすみません。
ただ、あくまでも大まかな道筋だけは事実で、9割方作り話だということは理解しておいてくださいね。


この作品のテーマは「依存」です。
決して依存し合う関係が悪いというわけではなく、その依存が「ただの依存」なのか「正しい依存」なのかが重要で、依存の中に確かに愛があれば、それは決して悪いものではないのだと私は思います。

いつまでたっても変わってくれないダメな恋人、ゼロスが嫌になってしまったがために、ヒロインは一方的にお別れしましたが、それでも心の奥底ではゼロスを信じたい、信じていたい、そして何より愛していたいと、本当は願っていました。

ゼロスはゼロスで、そんなヒロインの気持ちに気づいていながらも、今までの自分であり続けたい、変わりたくない、現状を維持していたいという思いや、そんな自分でも彼女は愛していてくれる、離れるわけがないのだと思い込みがあり、結果呆気なく一度は離れてしまいました。

誰だって、自身の手のひらから零れ落ちたものの大きさを知ったとき、そこでようやく相手の大切さと己の過ちに気づきます。過ちに気付いて、これはもう手放してはけないと本能で悟り、それを受け入れた瞬間に、今まで相手に見せたことのないような、本当の意味でみっともない姿を見せるようになり、変なプライドや意地を手放します。そうなったときに初めて、あぁこの人しかいないんだ、と思うようになるんでしょうね。

これは男性に限った話ではなく女性も同じで、失ってから気づいて必死にもがいたって、もう二度と元に戻らないことも、世の中にはあるんですが。

この作品内のふたりは、運よく再びお互いを選ぶことが出来ましたが、一度負った心の傷はそう簡単には癒えません。
その傷をどれくらい分かち合えるか、その傷跡にどれくらい寄り添って生きていけるかが、復縁後に長く愛し合うためには、非常に大切なことです。

これは私が常々思っていることですが、想いはきちんと言葉にしなければ相手の心には届きませんし、言葉はきちんと形にしなければ伝わりません。だからこそ、恋人たちが手を取り合って生きている世界に、『当たり前』ということは存在しないのだと考えています。

長く側にいればいるほど、気持ちや言葉は形を成さず、言葉にしなくても伝わるようにはなります。
しかし、それはあくまでもふたりの気持ちが同じ位置にあってこそ成立するのであって、同じ位置にふたりの気持ちがない中で愛情を伝え合うことをずさんにしてしまったら、それはただ愛情がないように見えてしまうだけなのです。

そうして徐々に生まれた亀裂は、いつしか修復できないほどのものになってしまっていた。だから、新しいものに取り替える。それを悔やむのは、いつだってすべてが終わって、自分の重ねてきた行動を振り返ったときです。

どうかみなさんは、いつか終わってしまう恋だったとしても、後悔しないようにしてくださいね。


そして、このお話のキーアイテムは「指輪」。
今ではもう付き合いたてのカップルも気軽にペアリングを買える時代ですが、私が学生時代にもよく聞いた怒りのセリフで「彼氏がペアリング失くした」とか「彼女がペアリング失くした」という類のものがあります。

このセリフを聞くたびに思っていたのですが、ここでの怒りの矛先は「ペアリングを失くしてしまうような相手のだらしなさ」ではなく、「ペアリングという二人を繋いでいるものを失った」ことなんですよね。

ペアリングに限らず、ペアのアクセサリーって、時に相手を苦しめる道具にすりかわってしまいます。だから愛し合う二人の関係を具現化したものではないんじゃないかなあ、と私は考えています。

本当に大切なのはペアリングではなく同じものを嵌めた「相手」のはずで、それがいつしか大切なもの=指輪、という風にすり替わってしまっているのが、何より悲しくて寂しいことだなと私は感じてしまいます。

この作中の二人も、ペアリングを嵌めているから、うやむやでもまだ二人は恋人のままだ、と思い続けていました。ペアリングは幸せをもたらすこともあれば、悲しみや亀裂を起こすアイテムのひとつにもなります。だからどうか、そういうすれ違いが起こらないように、本当に大切なものを見失わないでくださいね。


作中の二人は無事にお互いと向き合うことができ、新たな人生のスタートをきりました。この先、嬉しいことも楽しいこともあるでしょうけれど、きっと、苦しいこともたくさんあると思います。けれど、今の二人のままなら、きっとどんなことでも乗り越えていける。だからこそ、このままの二人でい続けてほしいと、私は願います。


長くなりましたが、ここまでお付き合いくださったみなさま、本当にありがとうございました。
また次のテイルズオブシンフォニアの作品でお会いしましょう。



2020.02.23 管理人:K

BACK

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -