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「あなたのことがぁー!?」
「…」
「とぅきだからー!!!」
ケイは今日も、元気だ。
「…なぁケイ、なにその意味わかんないの」
「え、ゼロス知らないの?」
ケイは驚いたように俺を見る。そんなもん知るか、俺は心の中で溜め息をつく。
ケイと同棲を始めて早1年。付き合って、もう4年になる。俺はもう結婚したいと思ってはいるが、お互い仕事もしてるし、なんとなくドライな二人なので言い出そうにも言い出せない。
それに愛しのケイは、ここ最近すっかり海外のよくわかんない男にメロメロだ。ドライなくせしてこういうところは潤ってやがる。
「最近ハマってんの、この人。かっこいいでしょ」
「いや、別に」
「はぁ!?もう、趣味の合わない男だなあ」
そう言ってケイは買いたてほやほやなのであろうそのポスターを俺に見せてくる。
「なに、ケイちゃんは俺にそういう男になってもらいたいわけ?」
「…不機嫌になんないでよゼロス」
「なってねぇよ」
「嘘。私のことちゃん付けで呼ぶときは不機嫌なときでしょ」
4年も一緒にいれば、そりゃいろいろお互いのことも知り尽くしているわけで。言い返せないでいる俺を見て、ケイはくすくすと笑った。
「別になんなくていいよ、ゼロスはゼロスのままでいいの」
「じゃあ俺とそいつどっちが好き?」
単刀直入にそう聞けば、ケイは目を丸くして俺を見た。そしてケタケタとおかしそうに笑う。
「そんなのゼロスに決まってんでしょ」
女好きでふらふらしてた俺が、4年たってもケイだけ見てられるのは、こいつのこういうところが好きだからってのもあるんだろうな。ケイの答えを聞いて、その意味の分からない海外の男に妬いてた自分がアホらしくなってきて、俺も笑った。
「なぁケイ」
「ん?」
「もし俺と結婚したら、そういうのやめる?」
なんとなく聞いてみれば、ケイはきょとんとして俺を見た。そしてうーんと首を傾げる。
「わかんない。だってイケメン観察は生まれ持った趣味だし」
「でも俺さま以上のイケメンなんて見たことねぇだろ」
「うん」
ケイは自分から進んで俺のことをどうのこうのとは決して言わない。だけど、問えば絶対に俺が一番欲しい答えをくれる。
「じゃ、もうそんな趣味無意味だって」
「…ゼロス、やきもち?」
「さぁ?」
「ゼロスに妬かれるの結構嬉しいから、出来れば結婚してもやめたくないかも」
ニッとケイは笑った。コイツめ、と心の中で苦笑い。
「あんまり俺さま妬かせすぎると、飽き飽きしてどっか行っちまうかもよ?」
「え!?それはやだ!!」
余裕ぶってたくせに、突然焦りだすケイ。4年たってもころころと変わる表情や感情は何一つ変わらない。ほんと、こういうところがいつもいつまでもたまらなく可愛くて、愛しい。
「じゃ、俺だけ見てろよ」
甘ったるい声でそう言って、ケイをそっと抱き寄せればケイは素直に俺に抱かれる。そして諦めたように溜め息をついた。
「もー…じゃあ、ゼロス、いつまでも私のこと離さないでよね」
「じゃ、結婚するか」
ドライな関係は相変わらず。なのでついついプロポーズもドライになってしまう。
「そうだね、いいよ、ゼロスとなら」
そしたら笑顔で、お前は答えるんだ。
「えらく軽い返事だな、おい」
「ゼロスのプロポーズだって軽かったでしょ」
「…んじゃあたまには真面目にこういうこともやっとくか」
俺はケイを真っ直ぐに見つめて、随分前から買ってあった指輪を取り出した。これにはさすがのケイも驚いたらしい。いつの間に、って顔して俺を見るケイ。プロポーズするときくらい、真面目にやって喜ばせてやろうと、ずっと前から決めていた。
「ま、これが噂の給料三か月分、ってやつだな」
ケイの薬指に指輪を嵌めれば、それはピッタリと嵌る。いつもはうるさいくらいのケイが、じーっとその指輪を見つめたままで、大人しくなってしまった。
「ケイ」
名前を呼べば、顔を上げる。その頬にそっと触れて、俺は今まで生きてきた中で、きっと一番真面目な顔で言った。
「結婚しよう」
そしたらいつもにこにこと笑顔のケイは、珍しく泣きそうな顔で俺に抱きついた。
「…普段こんなことしないくせに」
「プロポーズくらい真面目にやっとかねぇと、ケイの中に残らないからな」
「これはさすがに反則だって」
「さすがの海外アイドルもこれには適わねぇだろ?」
「適わないね、やっぱりゼロスが一番だわ」
抱きつくケイを抱きしめ返してやると、ケイを腕の中で俺を見上げて、俺の大好きないつもの笑顔で、泣きながら、笑った。
「…ゼロスのお嫁さんになりたいです」
「一生守ってやるよ」
「くさいよそれ」
「本気だぜ」
「…うん、嬉しい」
そして笑いあいながら、俺たちはキスをした。
FOREVER LOVE
(子どもは3人かなー)
(よし、じゃ、今日から早速子作り開始だな〜)
(え、ちょ、こら!)
2011.11.19
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