朝、修兵はピンクの愛車(自転車)をこぎながら蓮華の家に向かっていた。蓮華の家までは自転車で3分程の距離だ。学校までは自転車で20分程のだし、蓮華の家は通り道なので、彼女を拾うのはついでのようなものだ。

蓮華の家の前につくと、すでに蓮華が家の前で携帯をいじりながら待っていた。

「おす」
「遅い」
「うっせ」
「2分待った」
「ちっせー女」
「どうせ器のちっちゃい女ですよ」
「身長もな」
「だまれうんこ」
「朝からうんこ言うな」
「うこん」
「そのネタ飽きた」
「もー早く行こ」
「へいへい、乗れよ」

蓮華はちょこんとなれたように修兵の後ろに乗ると、とても自然に修兵の腰をつかむ。

「なんか修と2ケツすんの久々だねー」
「そうだなーお前太ったよな」
「いちいちうっさい」
「そりゃ悪かったな」
「てか修って意外に背中広いよね。やっぱ男の子だねー」
「男ですから」
「ですよねー」

他愛もない会話をしながら、修兵と蓮華は学校に向かった。






「じゃ、帰りもよろしくね」
「へいへい」

学校に着いて、自転車置き場に自転車を置き、2人は一緒に教室へ向かった。1年は1階、2年は3階、3年は2階にある。そして偶然にも、蓮華のクラスの真上に修兵のクラスがあった。蓮華のクラスに一番近い階段から修兵は3階へ上がっているため、ギリギリまで蓮華と一緒という事になる。

「これから1年こんな感じかー」
「修に彼女が出来たらあたしひとりで登校してあげるよ。無理だろうけど」
「お前に言われたくねぇよ。んじゃな、俺上だし」
「んじゃねー。あ、お弁当作ったから昼休み持って行くねー」
「おーサンキュ。頼んだ」

軽く手を振り、2人は別れた。

教室に入るなり、修兵はクラスメイトであり同じバンドメンバーでもある恋次に声をかけられる。派手な赤毛と刺青をしている大柄のいかつい青年だ。

「修兵〜お前朝からなーに蓮華とイチャついてんだよ」
「別にイチャついてねーよ」
「そうだよな、付き合ってねぇもんな」
「うっせぇよ」
「さっさと付き合えよ」
「そうしたくても出来ねえから困ってるんだよ」
「蓮華、お前と違って純粋だからな。鈍感だし」
「あの鈍感さにはほとほと呆れる」
「じゃあ俺に蓮華くれよ」
「お前なんかにやらねぇよボケ」

朝からやたらと無駄にテンションが高い恋次だが、それもいつものことだ。そんな光景もあと1年で見納めか、とぼんやり修兵は思った。

修兵と恋次は中学1年からの大親友で、修兵が音楽を始めたのも恋次がドラムを始めたのがキッカケだった。そんな恋次にとって、修兵の恋を応援するのは至極当然のことで、修兵の長い長い片想いの行く末を見届ける義務があるとなぜか強く思っているのだ。

「早く引っ付けよな」
「…そうなることを祈っとくよ」

もちろんそんな修兵の悩みなど、蓮華は知るはずもない。


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