テキスト | ナノ

 ボクも緑間くんも学生の頃は、それはもうバスケに首ったけでした。特に超長距離3Pシュートを得意とした彼は、ボールへのかかり具合を気にして、いつも爪を綺麗にしていました。ボクは彼のその真摯さが好きでした。
 大人になり一緒に住むいまも、小音でつけっぱなしたテレビの前の乳白色のソファに座ってやすりで爪を整える広い背中があります。
「毎日よく欠かしませんね、すごいです」
「……もう癖のようなものなのだよ」
 言ったあとに緑間くんは部屋の白んだ電光に手を透かしました。そしてまたやすりの刃をあて整え、透かすのです。
 その姿はあの頃と少しも変わっていなくて、ボクたちがバスケに打ち込んだ証を残してくれているように思います。


2016.06.13(ピンクの爪先に恋をした)