テキスト | ナノ

 今日はせっかく流れ星が見える日らしいのに、空からは、雨のほうが先にザアザア流れてきた。朝からどんより浮かぶ厚い灰色の雲は、夕方になってもいまだ晴れない。
「流れ星見るのちょっと楽しみにしてたんスよね」
 外出の帰り道、隣で傘をさして歩く黒子っちにぽつんとぼやいた。
「またいきなり、どうしてですか?」
「ちゃんとオレ、お願いごと用意してたっスから」
「お願いごと?」
「これからも黒子っちとずーっと一緒にいられますように、ってね」
 オレが言うと、黒子っちは傘を少し傾けて雨の降りしきる空を見あげる。けれどすぐにまた振り向いたその顔は、口元がほんのりほころんでいた。
「それ、お星さまにお願いしなくてもきっと叶いますよ」


2016.06.12(おほしさまにおねがいっ)