まだまだ春の領分だというのに、真夏のような太陽が輝く午後。青峰と黒子は人や車の通りでざわめく街中で、たまたま出くわした。ここで会ったのも何かの巡り合わせ、かのように、ふたりは連れ立って歩き出した。 しかし、何をするか、というところが一番の問題だ。ふたり頭をそろえて捻り出した選択肢は、じつに極貧なものだった。スポーツ用品店へ行くか、もしくはバスケするか、それである。 読みたい本も見たい映画も、遊び場も、それぞれ噛み合わないことは、お互いに中学のころから十分なほど分かっている。青峰と黒子の繋がりには、底深くバスケの存在が根づいている。他の選択肢など口にさえしなかった。 青峰が後頭部をぞんざいに掻きながら言う。 「もう、バスケでいいだろ」 「はい、そうですね」 無論、黒子も素直にうなずく。そしてポケットに差し入れていたスマートフォンを取り出した。 「他に誰か連絡しましょうか」 「はあ、何で?」 「だって1on1じゃボクが相手ではキミが満足できないでしょう」 途端、青峰は目を丸くし、やがて唇をむっとゆがませた。 「バカ。そんなガッツリやるわけでもねえし、そんならオレはお前とふたりのほうが落ち着くんだよ」 かつて帝光中の第四体育館でふたり、夜遅くまでともにバスケの技を磨いたあのように。青峰が、照れくさそうに黒子から視線を逸らせて言うのは、そういうことだろうか。 黒子は隣の彼に気づかれないように、そっと笑った。何も言わず、用の要らなくなったスマートフォンを再びポケットの中へ押し戻そうとしたとき、ぎらつく太陽光が鈍く画面に照り返した。 2016.05.15(二人だけの楽園へ向かう) |