テキスト | ナノ

 緑間くんは、左手にいつもテーピングをしています。それはいつ見ても綺麗な放物線をコートに描く3ポイントシュートを決めるための鍵のひとつでした。ボクが部活中に倒れて気遣ってくれたとき、あるいは、今となってはごくたまに、春に雪が降るくらい本当のまれに頭を撫でてくれるときにも、緑間くんの左手にはしっかりテーピングがされていました。それは、彼がどれだけバスケに真剣なのかを静かに物語っているような気がして、ボクはその左手から放たれるシュートがとても好きでした。
 いつか、彼の左手にもテーピングをされなくなる日が来るのでしょうか。できることなら、そんな日はずっと来ないでほしいとボクは思います。


2015.12.19(美しい指に撫でられたい)