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 黒子はいま、東京駅のホームで新大阪行きの電車を待っている。手には貴重品や二日ぶんの着替えを詰めた小さめのボストンバッグ。その外ポケットに『京都着』の切符が入っている。
 いつもは彼のほうがこちらに帰って来るから、黒子はその時を待つばかりだった。けれどある時、会いに行く側というのはどういう気持ちなのかと考えた。それを電話口で伝えると、彼は、赤司はすこし笑ったあとで、「それならお前の負担にならなければ、一度こっちに来るといい」と言った。
 黒子はいま、東京駅のホームで新大阪行きの電車を待っている。赤司に逢いに行くための、二時間半の旅が始まる。


2015.09.22(君を待つプラットホーム)