赤司と黒子がふたり並んで昇降口を出ると、雨が降っていた。空は厚い雲に覆われてどんよりと薄暗い。中途半端な時間だったので彼ら以外の人影はなく、そのことがいっそう景色を曇らせているような感じだった。黒子は、雨が降りそそいでくる空を見上げながら、赤司に言った。 「まさか雨が降るなんて思いませんでした」 「天気予報では言われていなかったからな」 「濡れて帰るしかなさそうですね」 諦めた黒子の声を、しかし赤司はすぐさま、いいや、と遮る。 「この雨はじきに止むよ」 揺るがない声音は、黒子を振り向かさせた。目を丸くして見つめてくるその様子に、赤司は小さく肩をすくめた。 「その顔は信じてないな」 「えっと、そうではないんですけど……」 「いいや、いいんだ。それならオレとひとつ賭けをしないか、黒子」 「賭け?」 赤司が顎をひいて静かに頷く。 「もし雨が止んだら、キスをさせてくれ」 黒子は微笑む赤司から視線をゆっくり外し、再び空を眺めた。雨はまだしとしとと降っている。 ほうっと吐き出された黒子の熱い息が、白い靄となって雨の降る空に昇っていく。 2015.12.04(てるてるぼうずを飾ろう) |